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「タダでいい」と中国サプライヤー

 JENESISは自社ブランド事業への本格参入に当たってaiwaブランドを使います。様々な商標権の保有者と交渉しましたが、決め手は日本、東南アジア、中東など世界で愛用者が多かったこと、TEMSホールディングス(東京・北)傘下のアイワ(東京・北)が一定の自由を与えてくれることでした注2)

注2)1946年に設立されたアイワは1980~1990年代、高い価格性能比のオーディオ機器で人気を集めた。しかしデジタル化の波に飲まれて不調となり2002年にソニー(当時)に吸収された。この企業と2017年設立のアイワは異なる法人である。
本記事で登場する企業の資本・取引関係
本記事で登場する企業の資本・取引関係
ソニー製品を受託製造してきた十和田オーディオ(秋田県小坂町)は2017年、ソニーからaiwaに関する商標権を取得してアイワを設立した。その後、十和田オーディオはグループを統括するTEMSホールディングスを設立。アイワは従業員数4人ながら、卸の角田無線電機(東京・千代田)傘下であるアイワジャパン(東京・千代田)などを介してAV機器を販売中。JNSホールディングスの母体ネオス(東京・千代田)は2015年、JENESISをグループ会社化し、2020年にJNSホールディングスに社名を変えた(図:大槻智洋)
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 もちろん、商標使用料を払わなければなりませんし、aiwaを知らない若者もいます。それでも市場の多く、特に法人向け商品の採用決定者に対して存在感をすぐにアピールできるのはメリットです。私たちは、このブランドにふさわしいものづくりをしていきます。

 だから、商品に貧相な外観なんて決して与えません。「製造の粗が目立ちにくいからこの塗装にする」なんてこともしないし、「公模」なんてまず使わない。公模とは中国語で、所有権や使用権があいまいな、多数の企業が共用する金型を指します。似たような外観の家電が中国からあふれ出る一因は公模にあります。

 こんな話を、中国IDH(Independent Design House、台湾系に多いODMに近似した業態の企業)にも話しました。そうしたら、「Jerald Fu(藤岡氏の愛称)、いよいよ大勝負するんだな。この部分の金型はタダでいいから成功しろよ」と言ってくれました。本当にありがたい。過去にどれだけそのIDHに貢献できたかわかりませんが、2014年に深セン市で自社工場をつくって運営し続けたおかげかもしれません。

コスパで負けない

 JENESISはデジタル商品の出荷を2022年8月から日本で始め、コスパ(価格性能比)でトップを張るつもりです。想定小売価格は税込みで6.5型スマートフォンが1万9800円、画面アスペクト比3:2で縦の表示域が広いWindows 11タブレットが4万9800円、Web会議に向け強力なマイクとスピーカーを備えたAndroidタブレットが4万4800円、血中酸素濃度を測れるスマートウオッチが6800円です。

発売予定品の一例
発売予定品の一例
記載の仕様は変更される可能性がある(図:JENESIS)
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 卸売りはダイワボウ情報システム(大阪市)など強力な企業が担ってくれます。上記は主に個人向け端末ですが、法人向け端末については業務で併用が想定される機器との接続を保証しますし、保証(自然故障の無償修理)期間として3年のオプションを用意します。通信やSaaS(クラウド型業務アプリ)のサブスク(月次課金)をバンドルしてToC(総保有コスト)の引き下げを追求します。

 2023年にはWi-Fiルーターやプロジェクターも売り出したい。盗難防止や介護などに向けたサービスも、JENESISの兄弟会社ネオス(JNSホールディングスの設立に伴い2020年に分割設立された組み込みソフトウエア会社)とともに開発していきます。

 これらの成果を確認できたら、いよいよaiwaブランド品を日本以外にも出荷していきたい。既に中東や香港の卸売業者から強い引き合いがあります。海外市場の開拓は簡単ではありませんし、一層シビアな在庫コントロールが必要になります。しかし、私たちは必ずや、技術者の血と汗でできたaiwaブランドが世界中で輝く日を復活させます注3)。(談)

注3)JNSホールディングスの中期経営計画によると、自社ブランド事業の売上高は2022年2月期に4.4億円。2025年2月期に約13億円とする計画。