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 ソニーが推進している、モビリティー関連の取り組み「VISION-S(ビジョン エス)」。第1号の試作車を2020年1月の展示会「CES 2020」に出展し、話題をさらった。それからおよそ半年。VISION-Sの現状や開発の狙いなどについて、責任者である川西泉氏(同社 執行役員 AIロボティクスビジネス担当)に話を聞いた。このうち、前回はソフトウエア技術を起点にしたクルマ作りやクラウド連携などについて取り上げた。後編となる今回は、先端プロセッサーを活用したECU(電子制御ユニット)の集約化の話や、コロナ禍後に求められる自動車の姿などを紹介する。(聞き手は根津 禎=シリコンバレー支局、中道 理=日経エレクトロニクス)

「CES 2020」で披露した「VISION-S(ビジョン エス)」の試作車
「CES 2020」で披露した「VISION-S(ビジョン エス)」の試作車
(撮影:日経クロステック)
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 現在の自動車には、ECUが70~80個ほど搭載されているといわれていますが、今後、冗長性を確保しつつ、集約されていくのは間違いありません。まず、集約化が進むのは情報系の部分でしょう。情報系には、先端の半導体部品、例えば高性能な最新のアプリケーションプロセッサー(AP)を利用して、複数のマイコンやSoC(System on Chip)をここに集約化できます。

 実際、VISION-Sの試作車では、HMI(ヒューマン・マシン・インターフェース)の部分を統合的に制御するAPに、米Qualcomm(クアルコム)の最新製品を採用しました。おそらくまだ、どこの車載部品メーカーや自動車メーカーも実際のクルマに載せていない先端品です。このAPで、各種計器類をディスプレー表示するクラスター部分と、インフォテイメント(ナビやエンタテインメント)の大きく2つを動作させています。

試作車の運転席周りを後部座席から撮影
試作車の運転席周りを後部座席から撮影
(撮影:日経クロステック)
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 クラスターは、どのような状況でも絶対に表示し続けなくてはならない。そこで、クラスターとインフォテイメントのOSは、ハイパーバイザーモードで別にして、安全性を担保しています。こうした先端半導体を利用したハイパーバイザーモードでのHMIの制御は、既に提案されているものの、我々は他社に先行してクルマに実装できたと自負しています。

 スマートフォンなどのモバイルを手掛けていることから、先端半導体の扱いや、どの製品を利用すればいいのか判断する「アタリ」を付ける能力を持っています。これは、自動車業界の企業とは違う強みかと思います。自動車業界なら、まず先端半導体を利用して「できるかどうか」から検討するところから始めると思いますが、我々は「できることは分かっているし、やり方も分かっている」というところからスタートするので先行できます。もちろん、半導体は車載仕様であることが前提となります。

 クアルコムの製品を採用したのは、映像コンテンツの描画性能が高く、かつ消費電力が小さいからです。加えて、5G(第5世代移動通信システム)との接続を想定して選定しました。一方で、ADASでは米NVIDIA(エヌビディア)の半導体製品を採用しました。これらの領域は進化も早いので、半導体各社の動向は常に注視しています。

 自動運転を実現する上で、現在よりも高い演算性能が求められることは間違いないのですが、どちらかというと、その目に当たる部分、すなわちイメージセンサーなどのセンシングデバイスに我々は注力しています。