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 新生NTTドコモグループが2022年7月1日に本格始動した。成長の柱である法人事業を担うのが、NTTドコモグループの一員となったNTTコミュニケーションズ(NTTコム)だ。NTTドコモの法人事業を統合し「ドコモビジネス」のブランド名で展開するNTTコムの丸岡亨社長に、今後の成長への手応えを聞いた(聞き手は堀越 功=日経クロステック、高槻 芳=日経クロステック/日経コンピュータ)

新生NTTドコモグループの成長の柱である法人事業を率いるNTTコミュニケーションズの丸岡亨社長
新生NTTドコモグループの成長の柱である法人事業を率いるNTTコミュニケーションズの丸岡亨社長
(写真:陶山 勉)
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7月1日にNTTコムとNTTドコモの法人事業を統合し、新たな体制がスタートしました。

 NTTコムとNTTドコモの法人事業が1つになることで、点から面へとビジネスが質的に変化する点が大きい。

 これまでのNTTコムは、大企業を中心に主に東名阪エリアで点のビジネスを展開してきた。それに対し、NTTドコモの法人事業は、中小企業や地域の法人顧客を含めて面的にアプローチしている。NTTドコモと一緒になることで、これまでNTTコム単体では提案が難しかった5G(第5世代移動通信システム)など無線を活用したソリューションを、1つの事業体として提案できるようになった点も大きい。

 現在、NTTコムとNTTドコモは、日本国内の大企業の90%以上と取引している。DX(デジタルトランスフォーメーション)の深い部分まで提供している例もあれば、電話回線などの提供にとどまるケースもある。今後はより深く顧客とお付き合いし、顧客の課題解決となるようなソリューションを提案していきたい。

 一方で中小企業とはまだまだ接点が少ない。中小企業との取引は、日本国内の3割強にとどまっている。この取引率をどんどんアップしていく必要がある。中小企業の顧客はまだDXの取り組みに不十分なところがある。回線と端末レベルの顧客も多い。業務アプリケーションなどを使ってデジタル化のお手伝いをしたい。

 大企業と中小企業向けでマーケットの違いがあるため、それぞれの市場に即したビジネスを展開していく。

新たに中小企業向けの事業戦略を担う組織を立ち上げました。これはマーケットの違いに対応するためでしょうか。

 そうだ。新たに立ち上げたのは、中小企業向けの事業戦略を担う「ソリューション&マーケティング本部」という組織だ。こちらで中小企業向け戦略の基本的な部分をつくる。

 中小企業への営業を面的に展開する組織として、ドコモビジネスソリューションズという子会社もつくった。こちらは5000人規模の会社であり、このマンパワーを使ってビジネスを展開する。

2025年度に法人事業の売上高を2兆円以上にする目標を掲げています。2020年度の同事業の売上高から4000億円超の増収が必要となります。中小企業向けビジネスの比率を大きく伸ばすということでしょうか。

 現在の法人事業における売上高構成比率は、大企業向けが6割、中小企業向けが4割だ。2025年度の段階でもこの比率をあまり変えるつもりはない。大企業と中小企業向けビジネスを、それぞれ同じように伸ばしていきたい。

 主力となる商材は変わっていくだろう。大企業向けビジネスでは、スマートワールド系や幅広い業種の企業との提携で価値を生み出す「B2B2X」のソリューションを成長させる。MPLS(Multi-Protocol Label Switching)を含めてネットワーク系サービスは厳しくなっていくだろう。マネージドサービスやセキュリティーサービスでカバーするなどして、ソリューション系を伸ばしていく。

 中小企業向けビジネスは少し様相が異なる。モバイル系が中心になる。モバイルで利用できるさまざまなアプリを含めて、働き方改革の提案やデジタル化のサポートをしていく。

旧NTTコムの2021年度売上高(約1兆円)の構成比を見ると、音声通話など「ボイスコミュニケーション」分野が約2割(約2000億円)を占めます。2024年から2025年にかけてNTT東西が予定する加入電話網(PSTN)のIP網への移行によって通話料が全国一律になり、NTTコムが強みとしてきた長距離電話ビジネスが大きく減りそうです。2兆円の売上高を目指すうえで、大きなハンディなのではないでしょうか。

 当然、音声通話の収入は落ちる。それをカバーして頑張らなければならない。