米onsemiの日本法人「オンセミ」の新社長、林孝浩氏に話を聞いた(図1)。同氏は2022年3月、オンセミの代表取締役社長に就任した。狙う市場は自動車と産業で、主力製品はパワー半導体とイメージセンサー。いずれも売り上げは好調とする。自動車の電動化やADAS(先進運転支援システム)、自動運転を背景に、車載半導体の出荷個数が増大しているという。(聞き手は小島郁太郎=日経クロステック/日経エレクトロニクス)
オンセミが現在、力を入れている製品や市場は?
「インテリジェントパワー」「インテリジェントセンシング」の2つの製品に力を入れています。市場は自動車と産業です。オンセミのミッションは、インテリジェントなパワーとセンシングの2つの製品や技術を用いて、地球規模の課題である温暖化ガスの削減などに貢献していくことです。
onsemi本社と同様の戦略ですね。オンセミの日本でのビジネスにはどのような特徴がありますか?
2022年第1四半期の決算では、onsemiの売上高のうち自動車向けは37%、産業向けは28%(図2)。この2部門に限ると売り上げが前年同期比42%増(全社では32%増)と大きく伸びています。
日本の第1四半期の売上高は全社の7%程度です。これは、顧客の日本拠点に納入した分のみですので、日本企業が持つ海外拠点に納入した分を加えると、割合はもう少し大きくなると思われます。日本の売上比率では、自動車向けが本社以上に大きいですが、おおむね本社と同様の状況ですので、本社と同様の戦略を取ることが合理的だと考えます。
自動車や産業向けのパワーおよびセンシングというと、具体的にはどういった製品でしょうか。
自動車分野では、車載イメージセンサーで世界市場シェア首位を維持しています(図3)。自動運転や駐車アシストのための超音波センサー、ADAS用LiDAR(Light Detection and Ranging:光による検知と測距技術)でも大きなシェアを持っています。電気自動車やハイブリッド車用のSiC/IGBTパワーモジュールにも力を注いでおり、さらに、車載用マイコンやLED照明、車体制御用のパワー半導体なども提供しています。
産業分野では、産業機器向けの中耐圧から高耐圧のパワーMOSFET、SiC/IGBTパワーモジュールが主力製品です。SiC/IGBTは充電インフラや代替エネルギーアプリケーション用にも提供しています。マシンビジョン、ロボット、自動化アプリケーション用のイメージセンサーも手掛けています。
特に売れ行きのいい製品はどれですか?
製品別の売り上げは開示していませんが、車載イメージセンサーが引き続き好調であることは確かです。ADASの進化に伴って、自動車1台当たりに搭載される当社の半導体の個数も増えてきました。以前は1、2個だったのが今では5個、10個と搭載されています。
車載カメラもリアカメラを皮切りに、サラウンドビューにフロントカメラ、サイドミラー、車内のドライバーモニター用やベビーミラー、インサイトミラーなどに搭載されるようになりました。自動車向けのセンシングは故障や不具合が許されないので、当社では車載システムにおける4000以上の故障モードを分析し、車載用センシング製品の耐故障性を向上させています。
自動車には電動化やADAS、その先の自動運転といった大きな潮流があり、10年前には想像できなかったことが起きています。当社もリーディングカンパニーとして、新技術を利用した自動車の新しい機能を提案する形で、ビジネスを広げていきたいと考えています。