米Evernote(エバーノート)の共同創業者で元CEOのPhil Libin(フィル・リービン)氏が2020年7月、「Zoom」や「Google Meet」といったビデオ会議アプリや「YouTube」といった動画サービスで利用できる新しいプレゼンテーションアプリ「mmhmm」(ンーフー)を発表した。退屈だった今までのビデオ会議をもっと面白くする――。そんな目標を掲げる同アプリはいかにして誕生し、どのようなビジネスモデルを描いているのか。Libin氏に話を聞いた。(聞き手は市嶋洋平、根津禎=シリコンバレー支局)
なぜ今、mmhmmという会社を新たに起こし、この製品を作ったのか。Zoomでは物足りないと考えているのか。
ビデオでのコミュニケーションをよりシンプルかつ簡単に、楽しくしたいと考えた。プレゼンテーションの資料を背景にしたり、複数の人とプレゼンしたり、他の人と一緒に作業したりするといったことを実現したい。
Zoomをはじめとしてさまざまなビデオ会議サービスがあり私も使っているが、退屈で疲れてしまう。Zoomに悪いところがあると言っているのではない。ただ画面上で人が(Zoomなどで一般的な参加者を表示する)「黒い小さな箱」に入っているだけでいいのか。米国メディアの記事で「Zoom疲れ」というのもあった。そこで、ビデオを利用してプレゼンするためにもっと適切な方法が必要だと考えた。
mmhmmのプロジェクトを始めたのはいつか。
20年4月だ(Libin氏はその時期、Twitterに「Zoom会議の生産性を2倍にする方法を思いついた」と投稿している)。そこから検討を始めて同年4月末から5月初めに、これは実際にニーズがあると考え、チームを作って素早く動き始めた。
mmhmmはどのような思想で開発したのか。
やはり面白くて、有用であるということだ。これらは米Twitter(ツイッター)の共同創業者であり我々の出資者でもあるBiz Stone(ビズ・ストーン)氏が言ったことだ。Twitterの初期はそうだったという。我々もまさにその通りだと思っている。有用であるということは、我々の当初からの考えだ。
なぜ、mmhmm(ンーフー)という社名やサービス名にしたのか。
実は日本の禅の哲学に触発された面がある。「mmhmm」は会話の中で自然と出てくる言葉だ。あえて言おうとするのではなく、意図しなくても、考えなくても自然と出てくる。
現在のベータユーザー数とその反応は。なぜMacOS版から始めたのか。他の端末では利用できないのか。
数千以上の申し込みがあるが、トライアルではあえて1000ユーザー程度に絞っている。最初は限られたユーザーの声を聞いていきたいと考えたからだ。当初はシークレットでベータ版を進めようとした。ただmmhmmのようなコミュニケーションツールには合っていないと思った。そこで、ベータユーザーに対して、秘密にするようにお願いするのをやめた。8月にはさらに多くのユーザーに使ってもらおうと考えている。
我々は(20年7月7日の)mmhmm公表時に1本の動画を「YouTube」に投稿した。mmhmm の特徴を説明した動画だ。既に数十万回も視聴されている(20年7月29日時点で約31万回視聴)。ここまで大きな反響を得るとは想定していなかった。人々がmmhmmのようなものを欲しいと思ったときに公開したからだろう。
MacOS版から開発したのは、私も友人もMacユーザーだからだ。もちろん、Windows版やスマートフォン版などにも取り組んでいる。