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「YDX(YASKAWA Digital transformation)」を進める安川電機。デジタル経営の実現を掲げ、あらゆる現場の情報をデジタルデータで「見える化」して、迅速かつ緻密な経営判断を実現するのが目標だ。そのためにコードや業務の統一と標準化を進めてきた。改革の先頭に立つ小笠原氏に狙いを聞いた。(聞き手は吉田 勝)

写真:栗原克己
写真:栗原克己
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 現在、安川電機では「データを世界の共通言語に」をビジョンとして掲げ、「YDX」と銘打って経営のデジタル化を進めています。一般にDXは、デジタル技術によるビジネスモデルの変革・創出といった趣旨で捉えられていますが、YDXはもっとシンプルな取り組みです。IT化をきちんと進めて経営を見える化するのが狙いです。

いまの経営状況を知りたい

 社長に就いてまずやりたかったのが社内の用語やデータの統一でした。グローバルで共通言語として使えるようにしたかった。同じ用語なのに別のものを指していたり、同じものに別々の言い方があったりといったバラつきがかねて気になっていたからです。

 例えば「工場原価」。生産現場で多用する言葉ですが、例えば輸送コストを含める/含めないなどの定義が工場によって微妙に違う。70社ほどある連結子会社でも、ある子会社で含めている勘定項目が別の子会社では抜けているといった状態でした。

 それでは経営を見える化できない。横並びで比較するために、データの中身を見直して手作業で調整する手間が掛かる。事業部や事業所、グループ企業ごとに用語の定義が微妙に違うとすぐにデータを集計できず、とても効率が悪い。全社で生産性や業績を精緻に評価できないわけです。そこで、まず用語を統一し、ユニークに1つのものを指すように定義し直しました。言葉の意味が一義的に決まっていれば、仕事も進めやすくなるし、グローバルの横串視点で正しく細かく事業を評価できます。それがYDXのスタートです。

 やりたかったのはごく単純で、リアルタイムに経営状況が分かるようにするという「経営のコックピット化」です。DXと言うと、顧客のデータをクラウドで収集し、製品に反映させたりAIで分析したり、新しい事業を生み出したりといった姿を想像するかもしれませんが、YDXではそうした未来的DXは当面考えていません。そういう未来像を描く以前に、まず足元をきちんと固めなくてはならないからです。