「人間の意識を機械に移植することは、はるか彼方の夢と述べたが、その夢が実現する日は意外にも早く来るのではないか」。自著『脳の意識 機械の意識』(中公新書、2017年)にそう書いた東京大学大学院工学系研究科 准教授の渡辺正峰氏が、夢を現実にするため動き出した。脳とコンピューターを多数の接点で繋げるBMI(Brain Machine Interface)技術を核にしたベンチャー企業を近々立ち上げる計画である。その先に見据えるのが、人の意識をコンピューターに移植(アップロード)する技術の完成だ。ベンチャー設立の狙いと、技術の理論的背景や展望を同氏に聞いた。(聞き手=今井 拓司)
『脳の意識 機械の意識』で語ったアイデアを実現するために、ベンチャー企業を立ち上げる準備を進めています。協力を申し出てくれた、起業の経験があるパートナーと一緒に設立する計画です。
究極の狙いは、人の意識を機械に移植(アップロード)することです。本に記した意識に関するいくつかの仮定が正しく、デバイスの開発がとんとん拍子で進めば、20年後の実現もまったくの夢ではありません。ぜひそれを自分の手で達成してみたい。自分は死にたくありませんから(笑)。ただし、一足飛びには実現できませんし、ベンチャーとしてお金を稼ぐ必要もありますから、まずは2〜3年くらいでマネタイズ(収益化)できる事業を考えています。
これまで私は、東京大学やドイツのマックス・プランク研究所で研究を続けてきました。今になって大学発ベンチャーの設立を考えたのは、大学の一研究室の規模では、私の目の黒いうちにはとても実現がかなわないと考えたからです。