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(写真:加藤 康)
(写真:加藤 康)

テクノロジーの活用が急速に進みつつあるエンタメ業界。新型コロナウイルス感染症の影響で大きな変化を余儀なくされた一方で、テクノロジーを活用してデジタルとフィジカルの融合を加速させ、新たなコンテンツの価値創出に取り組んでいる。多くのコンテンツIPを保有するバンダイナムコエンターテインメントは、新型コロナ禍を契機にどんな未来を描くのか。同社代表取締役社長の宮河恭夫氏に聞いた。(聞き手は野々村洸、東将大)

まず新型コロナ禍においてエンタメ業界では、テクノロジー活用の加速など、どのような変化がありましたか。

 2020年2月頃からコロナ禍の影響が大きくなり、それから4カ月間くらいは試行錯誤の期間で、何をやったらいいのか、何を補完すべきなのか、1番迷っている時期でした。同年6~7月頃から、新しい仕組みを事業に取り入れることができ、新しい時代になったと思えるようになりました。

 音楽では、無観客のオンライン配信ライブをしたり、観客を半分にしてリアルとオンラインを並行したライブをしたり、新たな形に取り組んできました。特にフィジカルに参加者同士が会えなくなってしまったので、ただライブ映像を流すだけではなく、公演の前後に参加者同士がコミュニケーションをできるような場所を提供することにも挑戦しています。例えば、参加者が3DアバターでコミュニケーションできるVR(Virtual Reality)空間を、「アイドルマスター」のオンライン配信ライブで使いました。開演前にコミュニケーションしながら物販商品を買えるシステムも取り入れました。まだ完成形には至っていませんが、今後どんどん進化させていきたいと思います。

 やっぱり、ライブ前後のコミュニケーションっていうのは、とても大事なんです。例えばライブが17時半開場、18時半開演だとしても、参加者はお昼前後ぐらいから会場に行って、友達としゃべったり、物販に並んだりすることを楽しみます。だから、ライブ自体は正味2時間かもしれないけれど、実際には半日、大げさに言えば丸1日通してライブを楽しんでる。リアルではできないライブ前後のコミュニケーションを、バーチャルで実現できないかと思っています。

 この3年間ぐらい電子化、電子化と掛け声が多くあったものの、なかなか進まなかったチケットの電子化も、今回で一気に進みました。例えばバンダイナムコライブクリエイティブとイープラスはチケットレスの入場システムを導入しています。チケットを買ったらまずスマートフォンで事前に自分で顔写真を撮って登録する。会場の入り口にはカメラがあって、顔認証でスムーズに入場でき、同時に体温なども測定できます。こうして誰の手も介さない仕組みであれば、チケットの発送や受け取りの手間が減るだけでなく、転売対策にもなります。加えて、チケットの購入情報が登録されているので、万が一クラスターが発生してもエリアが特定できて、参加者と連絡を取りやすくなります。これまでの電子チケットはシステム基盤がしっかりしておらず、ただスマートフォンの画面のQRコードを見せるだけでした。それがちゃんと認証システムと組み合わさるようになったのはすごいことだと思います。