全3026文字
PR

 中国・上汽通用五菱汽車が2020年7月に発売した最低価格2万8800元(1元=17円換算で約48万9600円)の格安電気自動車(EV)「宏光MINI EV」――。中国の地方部を中心に人気を呼んでいる。その人気ぶりは、中国でも販売好調な米Tesla(テスラ)のEV「モデル3」を月間販売台数で上回るほど。そのヒットの要因と安さの秘密について、先ごろ同EVの報告書をまとめたというフォーイン中国調査部部長の周錦程氏に聞いた。

上汽通用五菱汽車の格安EV「宏光MINI EV」
上汽通用五菱汽車の格安EV「宏光MINI EV」
(出所:上汽通用五菱汽車)
[画像のクリックで拡大表示]
フォーイン中国調査部部長の周錦程氏
フォーイン中国調査部部長の周錦程氏
オンライン取材の画面をキャプチャーしたもの。
[画像のクリックで拡大表示]

宏光MINI EVが中国で人気を呼んでいるが、その理由をどう分析しているのか?

 理由は大きく2つある。1つは「安さ」、もう1つは「女性(に受け入れられたこと)」だ。

 上汽通用五菱汽車は、宏光MINI EVを当初は若者向けとして売り出した。商品コンセプトは、「最安の4人乗りEV」。低価格で補助金に頼らなくても売れる4人乗りのEVを目指した。

 背景には、宏光MINI EVの前に市場投入した「宝駿E100」「同200」という低価格EVの存在がある。これらはある程度は売れたが、2人乗りということもあって、期待ほどは売れなかった。そうした試行錯誤の末にたどり着いたのが、今回の最安の4人乗りEVというコンセプトである。

 そして、そうしたコンセプトは実は女性の方に向いていた。

そうしたコンセプトのどこが女性に向いていたのか?

 女性には、運転が苦手という人が少なくない。(全長2917×全幅1493×全高1621mmと)小型な車体は小回りが利く。高速道路は怖いので使わないという女性にとっては、最高速度は控えめでもよい。加えて、内燃機関(ICE)車と比べて、EVにはクリーンなイメージがあり、女性にとって使い勝手が良い。

 その結果、宏光MINI EVは女性に受け入れられてヒットした。上汽通用五菱汽車もここまで爆発的に売れるとは思っていなかった。生産能力の増強を図っているが、今でも不足が続いている。上汽通用五菱汽車の生産能力の増強にサプライヤーがついて来られない部分もある。

 中国の自動車市場は、これまでは男性中心のマーケットだった。女性の購入者はせいぜい10~20%ほどだった。だが、上汽通用五菱汽車の発表によると、21年3月時点で宏光MINI EVの購入者は、1990年以降生まれが全体の72%を占めており、そのうちの女性の比率は60%を超えている。

 興味深いのは、メルセデスベンツも中国では購入者の50数%は女性となっていることだ。高級車と低価格車への女性のニーズが中国では高い。その中間は、今は男性が主流。だが、今後は女性も伸びてくる可能性はある。

 中国の自動車市場は、これまでは大型化に進んでいた。まずはAセグメント車を購入し、買い替えの際にBセグメント車やSUV(多目的スポーツ車)に乗り換える。ただ、その中心は30歳代や40歳代以上。これに対して、今の20歳代や30歳前後の若者は、大型でなくてもよいと考えている。特に女性にその傾向が強く、手が届く低価格のクルマを求めている。

 背後にあるのは、経済力の差である。実は、宏光MINI EVは北京や上海などの大都市ではあまり売れていない。大都市では経済的に恵まれた層が多い。また、上海ではナンバープレートの緩和対象から宏光MINI EVは外されている。