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 新型コロナウイルス感染症の拡大が、自動車業界に大きな打撃を与えている。完成車メーカーと比べて規模の小さい部品メーカーにとっては正念場だ。中長期的には、電動化によって内燃機関部品が減る影響も大きい。日本自動車部品工業会(部工会)の新会長に就任した尾堂真一氏に、自動車部品業界の見通しを聞いた。(聞き手は清水 直茂=日経クロステック)

尾堂真一(おどう・しんいち)氏
尾堂真一(おどう・しんいち)氏
日本自動車部品工業会会長、日本特殊陶業代表取締役会長(撮影:宮原一郎)
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コロナ禍の影響はどうか。

 バブル崩壊やリーマン・ショックをはるかに上回る。グローバル化、そして効率化してきた我々のサプライチェーン(部品供給網)が、全て分断される危機に陥った。しかも一時的なものではなく、いつ終わるのか分からない状態だ。

 業績面では、2020年内は厳しい状況が続くだろう。とりわけ第1四半期(4~6月)、第2四半期(7~9月)が苦しく、20年度通期で売上高が2~3割くらい減ることはあり得ると思っている。

 一方、当社(日本特殊陶業)の状況で言えば、4~5月が底で、6月に回復の兆しが見えてきた。一番大きいのは、中国が前年同期を上回る販売水準に戻っていることだ。後は欧米がどうなるか。来年(21年)以降は、ほぼ通常に戻るのではないか。

 またコロナ禍で経済全体がしぼんだわけではない。当社の完成車メーカー向けの生産は停止して大きな影響が生じたが、アフターマーケット向けはそれほど影響を受けていない。

資金繰りは大丈夫か。

 今のところ、影響があったのは会員企業ではサンデンホールディングスくらいだ注1)。リーマン・ショックで多くの部品メーカーが苦しんだ後、内部留保を増やした。また電動化が進む中で内燃機関関連に大きな投資をしにくいという競争環境もあり、内部留保が積み上がってきた側面もある。それが幸いした。株主からはなんだかんだと言われてきたが。

注1)20年6月、私的整理の1つである事業再生ADR(裁判外紛争解決手続き)の利用を発表した。

サプライチェーンが一極集中していた。

 たまたま中国・武漢市にサプライチェーンが集中していたところに、新型コロナウイルスが発生してロックダウン(都市封鎖)された。アジアでは、タイやインドネシアなどにも集中している。武漢に拠点がない部品メーカーも、もしタイが同じ状況になったらどうなるんだろうと考えて、最悪の状況を免れるサプライチェーンを構築しないといけない。生産拠点を日本に戻すこともあり得る。各社がいろいろ考え始めているのではないか。

 問題になるのがコストだ。一極集中には、コストが安くなるメリットがある。消費地に合わせて生産拠点を分散すると、普通はコストが高くなる。どうするか。私はデジタルトランスフォーメーション(DX)が重要になると考えている。

 日本のものづくりは、ものすごく強い現場力に支えられてきた。乾いた雑巾を何回も何回も絞ってきた。さらなるコストダウンは、これまでの延長線上にある取り組みでは難しい。

 海外に視野を広げると、DXを活用して新しいものづくりを模索している。今まで人に頼っていた現場力を見える化する。特定の人が持っているノウハウをデジタル化して、他の人もできるようにする。DXには大胆に取り組んでいきたい。