連系線も周波数制約の限界まで活用
DSSが減ると、再エネの出力制御が増える可能性も否定できないと思いますが、安定供給に支障が出るのならばいたしかたないですね。再エネの受け入れのために地域間連系線も積極的に活用されているのですか。
平島氏 連系線で他エリアにより多く送電することでも、再エネの受け入れ量を増やすことができます。九州エリアは関門連系線で本州と接続していて、最大の送電容量は278万kW(冬季326万kW)です。この容量は、熱容量の制約(送電に伴う温度上昇の許容限界)によるものですが、実際の送電容量には周波数による制約もあります。
九州から中国エリアへ送電している場合に、事故などで連系線が途切れたとすると、中国以東のエリアでは電源が突然失われるため周波数が低下します。その低下を許容できる限界は時期によっても異なりますが、電力需要の少ない時期の休日昼間だと、おおよそ200万kW程度です。
一方、九州エリアは電力が送れなくなり余ってしまうため、逆に周波数が上昇します。その許容値は、中国以東エリアの周波数制約の限界値200万kWを下回る場合があります。つまり、中国以東は200万kWまで受容できるのですが、九州側の周波数制約がネックとなり、連系線の運用容量がより少ない容量に制限されます。
この九州・中国エリアの周波数制約のギャップを解消して送電容量を増やすために、新しいシステムを2019年4月に導入しました。関門連系線で事故が発生した際に、瞬時に九州エリアの30万kW分の発電機を停止するというものです。このシステムの導入により中国以東エリアの周波数制約の限界である200万kWまでの送電が可能となり、その分だけ太陽光発電を受け入れられるようになりました。
太陽光をより多く受け入れるために、揚水発電のくみ上げで需要を作り出しているということですが、その量は増加しているのですか。
平島氏 図6が2013年からの揚水(くみ上げ)回数の推移です。当初の揚水は、夜間に余る原子力の電力を利用するために使われてきましたが、太陽光の導入量が増えるに従って昼間に余る電力を吸収するために使うようになりました。
図6を見ると、太陽光の導入量の増加に合わせて、従来はほとんど行われていなかった昼間の揚水回数が、急増しているのが分かると思います。揚水発電所の使い方は大きく変わりました。
ただし、昼間にくみ上げを続けると揚水発電所の上池が一杯になってしまうので、どこかの時間帯で必ず水を落として電力として利用しなくてはいけません。そうしないと、翌日に太陽光の電力が余ってもくみ上げられなくなります。そこまで予測して運用するのが難しいポイントですね。
揚水発電以外にも、豊前蓄電池変電所という出力5万kW、容量30万kWhのNAS電池の蓄電システムもありますので、そちらも活用しています。
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火力の低負荷運転やDSS、地域間連系線、揚水発電などを活用して太陽光発電を受け入れる九州電力送配電。後編では太陽光の出力制限の現状と、その必要性について聞く。
編集者・ジャーナリスト