“日の丸液晶”の期待を背負い、2012年に発足したジャパンディスプレイ(JDI)。しかし創業から6年間、業績の下方修正や赤字決算が続いている。同社の改革を託されたのが、日本コカ・コーラ、デル米国本社、レノボ、アディダスジャパン、ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント、ハイアールアジアなど様々なグローバル企業を渡り歩いてきた異色の経営者、伊藤嘉明氏だ。異質な挑戦を続ける伊藤氏に、JDI改革の手応えと課題について聞いた。
・伊藤嘉明氏のインタビューの前編はこちら
新組織の立ち上げから100日以上がたちましたが、以前との違いを感じますか。
伊藤氏 はい。感じます。今回の発表会によって新たな一体感も生まれました。このために、皆、昼夜問わずに頑張ってきましたから。そして、(新しい挑戦によって、)これまでは求められていなかったことが求められるようになりました。「スマートフォン用のディスプレーだったら、こんな難しい調整を考えなくていいのに」という場面に、技術者が直面するのです。そういうところでの技術者の切磋琢磨が始まりました。
私は、技術者の可能性を広げたいんです。
「顧客から求められていないものは、やる必要がない」「それは求められていないんだから、余計なことをするな」と言われてしまったら、たとえ技術者が自分でやりたいことや出来ることがあったとしても、技術開発は停滞してしまいます。
技術者は探究心を追求する人たちですから、それでは伸びません。それは違うと思うんです。そこを拾ってあげたり、変えていったりする土壌を作るのが、経営陣の仕事だと思います。私は今までもそのようにやってきました。(経営陣が)そうしないと変わりません。
そういう意味で、私はJDIの新しい文化を創ることを狙っています。JDIはこれまで、やるべきことをやれていなかったと思います。(6年前に3社の液晶事業を統合する形で発足しましたが、)融合しきれていないところもあったでしょう。新しい文化がまだ出来ていません。
今だと思うんです。(統合前の会社の)DNAは生かすにしても、文化は新しくしないといけません。技術のDNAは生かす。ただし、文化は新しく作るものです。企業文化は醸造しないといけません。
新しいことに挑戦することによって、「えー、うちはディスプレー屋なのに、パネル以外のことをやるのか」「スマホ以外をやっちゃうのか」「そんなのけしからん」と言ったり思ったりしてきた人たちだって、変わるかもしれません。ビジネスの可能性を見たり、共感を覚えたりしたら、「ああ、ありかもしれない」となるかもしれないですよね。