脱炭素に向けて、航空機業界が電動化に舵(かじ)を切っている。機体開発メーカーだけでなく、航空会社も導入に前向きだ。中でも積極的な姿勢を見せるのが、米United Airlines(ユナイテッド航空)である。同社のCVC(コーポレート・ベンチャー・キャピタル)であるUnited Airlines Ventures(UAV)を通じて、電動の垂直離着陸(eVTOL)機を手掛けるスタートアップ(新興)企業の米Archer Aviation(アーチャー・アビエーション)と、電動の小型固定翼機を手掛けるスウェーデンHeart Aerospace(ハートエアロスペース)に出資。グループの米Mesa Airlines(メサ航空)と合わせて、アーチャーとハートエアロスペースからそれぞれ最大200機を購入する予定だ。eVTOL機は今後5年(2026年)以内、ハートエアロスペースの機体は26年の就航を目指している。加えて、超音速機を手掛ける米Boom Technology(ブーム・テクノロジー)にも出資。同社の機体を最大50機購入する契約を結ぶなど、新たな航空機への投資に積極的である。その理由は何か。UAVの責任者(President of United Airlines Ventures:ユナイテッド航空ベンチャーズ社長)で、ユナイテッド航空 Vice President of Corporate Development and Investor Relations(事業開発及びIR担当副社長)を務めるMichael Leskinen氏に話を聞いた。
(聞き手は根津 禎=シリコンバレー支局)
なぜ、電動航空機の新興企業に投資し、機体購入に踏み切るのですか?
これまで米国の航空産業は、主にコスト削減に力を入れてきました。この分野に、再びイノベーションをもたらしたいと考えており、その中でも重要なトピックは脱炭素化です。この目標に向けて、いくつか方法があります。例えば短距離路線であれば、ハイブリッド車(HEV)や電気自動車(EV)のような電動化が有効な手段です。
ただし、長距離路線に適用するには、まだバッテリー(2次電池)のエネルギー密度が少ないという課題があります。ですから、長距離路線では「持続可能なジェット燃料(SAF)」を利用することになり、電動航空機は当初、短距離路線にとどまるでしょう。例えば(短距離路線であれば)、ニューヨークやサンフランシスコ、東京といった、交通渋滞がひどい大都市において、アーチャーが手掛けるようなeVTOL機を適用すれば、現在のヘリコプターよりもはるかに迅速、かつ安全に、ダウンタウン(都市中心部)から空港までアクセスできるようになります。
(都市間など比較的短距離を飛行する)リージョナル路線(地域路線)でも、電動化は有効な手段でしょう。ハートエアロスペースは、固定翼を備えた19人乗りの機体を開発している企業です。できれば50人乗りや75人乗りといった、もっと大きな電動航空機が望ましいですが、こうした機体を早期に実現できるように技術開発を促すためにも、今から投資しています。ハートエアロスペースの19人乗りという機体は、現在の電動航空機の中でも多い部類に入ります。