全3422文字
PR

 「100年に一度の変革期」――。自動車産業を取り巻く環境は一変し、次の100年に向けた熾烈(しれつ)な開発競争が始まっている。その渦中、2021年6月に日野自動車の社長に就任した小木曽聡氏。トヨタ自動車で3代目「プリウス」や「アクア」といったハイブリッド車(HEV)の開発責任者を務め、電動化技術に詳しい人物だ。同氏に今後の技術戦略を聞いた。

(聞き手は窪野 薫、久米 秀尚)

小木曽 聡(おぎそ・さとし)。1961年生まれ。東京都出身。83年3月に東京工業大学工学部機械工学科卒業後、同年4月にトヨタ自動車入社。ハイブリッド車(HEV)の3代目「プリウス」や「アクア」の開発責任者を務めた。常務理事、常務役員などを経て、2015年6月にアドヴィックス社長に就任。18年にトヨタに戻り、専務役員、CV Company President、執行役員を歴任。21年2月に日野自動車顧問、同年6月から社長として指揮を執る。(写真:加藤 康)
小木曽 聡(おぎそ・さとし)。1961年生まれ。東京都出身。83年3月に東京工業大学工学部機械工学科卒業後、同年4月にトヨタ自動車入社。ハイブリッド車(HEV)の3代目「プリウス」や「アクア」の開発責任者を務めた。常務理事、常務役員などを経て、2015年6月にアドヴィックス社長に就任。18年にトヨタに戻り、専務役員、CV Company President、執行役員を歴任。21年2月に日野自動車顧問、同年6月から社長として指揮を執る。(写真:加藤 康)
[画像のクリックで拡大表示]

CASE(コネクテッド、自動運転、シェアリング、電動化)など次世代の車両開発で日野はどの部分にこだわりますか。

 車両全体の企画を重視していきます。当社にとって「一丁目一番地」といえる領域です。トラックなどの商用車は、顧客の要望に応じて荷台部分の架装・特装をアレンジして供給しますが、この点は商用電気自動車(EV)や商用燃料電池車(FCV)の開発でも変わりません。物流事業者を中心とした顧客を知り抜き、要望を的確に捉えられるのが当社の強み。電動化の時代でも、車両企画は当社が担って勝負していくべきだと考えます。

 車両企画は担いますが、構成する部品や技術を内製するかは時と場合によるでしょう。例えば、EVトラック用の駆動用モーターです。車格が大きい商用車はディファレンシャルギアとアクスル軸が強固に組み付き、一言で表現するとガタイが大きい。駆動用モーターを組み合わせてどこまで外注するのか、企画段階からしっかりと作戦を立てなくてはなりません。

 22年初夏に小型EVトラック「日野デュトロ Z EV」を市場投入します。この車両の場合、既存モーターをただ流用するのではなく、小型EVトラックに必要な駆動特性を盛り込んで開発・調達します。トヨタグループとしての連携を密にして進めていきます。

 また、電池パックも駆動用モーター同様にEVトラックの性能を左右する重要部品です。こちらもトヨタグループの力を借りながら、場合によってはこれまで「仲間づくり」として提携を進めてきた海外企業から調達することもあるでしょう。

 私はトヨタ在籍時にHEVの開発責任者を務めてきました。30年弱ほど電動車両に携わってきましたので、こうしたEVトラックの企画に対しても知見を生かせると考えています。大切なのは過程ではなく結果です。顧客や社会の役に立つことを目標に、企画・開発チームで臨機応変に対応していきます。

今後、商用車のHEV化はどう進めていく考えでしょうか。

 HEVは、バイオ燃料やe-fuel(再エネ合成燃料)といったカーボンフリーの燃料を活用して脱炭素を狙う形になるでしょう。すべての車両がEVやFCVへ一気に置き換わるのではなく、30年を通過点に50年の脱炭素に向けて割合を高めていくはずです。つまりHEVはまだまだ残る。変遷の時間軸を見極めながら、当社もしばらくはEV、FCV、HEVをすべて並行で展開していきます。