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 車載モーターなどに使う半導体の安定調達や内製化に向けて、日本電産が2022年5月に立ち上げた「半導体ソリューションセンター」。同センターの所長を務めるのが、同社常務執行役員の大村隆司氏だ。ルネサスエレクトロニクスやソニーグループなどで半導体事業を手掛けてきた同氏はなぜ、新天地として日本電産を選んだのか。(聞き手は久米秀尚=日経クロステック/日経Automotive、木村雅秀=日経Automotive編集長)

日本電産常務執行役員の大村隆司氏
日本電産常務執行役員の大村隆司氏
半導体ソリューションセンター所長で、副最高技術責任者(CTO)の役割も担う。(写真:加藤 康)
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2022年2月、ソニーグループから日本電産に移籍した。

 ただ永守重信会長からラブコールが来たから入社したわけではない。危機感、そして仮説を持って日本電産に来ている。

 私の心配は、日本が世界から取り残されていることだ。このままでは日本がどんどん弱っていく。(ソニーグループの前に所属していた)ルネサス時代は、家電や携帯電話機など民生機器の業界が中国をはじめとする海外勢に負ける姿を見てきた。次は自動車だ。真摯に向き合わないと、グローバルで勝ち残れなくなる。

 企業に所属しているので当然、日本電産のことを一番に考える。だが、日本のことを思うと、自動車業界のトレンドを理解して、特に中国の動きをひもときながら次の打ち手を考えないときっと負ける。

 では、自動車業界や中国の動向を得られる場所はどこか。私は、日本電産がそういう情報を得られる唯一の会社だと考えて入社を決めた。実際、情報は入るし、スピード感もある。他社の2倍以上は速い。

半導体ソリューションセンターを設立し、所長に就任した。

 私が同センターに関する提案書を出したのが2022年3月後半だった。そこからわずか1カ月半で新しい組織が立ち上がった。永守会長を含め、いいことはすぐに実行に移す文化が日本電産にはある。他社では1年かけても設立までもっていけなかったのではないか。この点は、さすが日本電産だと思った。

 半導体ソリューションセンターの役割の1つは、どの半導体メーカーが技術的に優れているかといった情報をいち早く把握することだ。すでに、パワー半導体などに関してRFI(Request for Information:情報提供依頼)を出している。

 そして、当社が欲しい半導体を明確に提示する。ここが、日本の自動車メーカーや1次部品メーカー(ティア1)ができていないところ。欧州勢は自分たちが造ってほしい半導体の仕様を、RFQ(Request for Quotation:見積もり依頼)という形でしっかり出せる。

 日本勢で半導体のRFQを作成できるところはほとんどない。そうなると、カタログから選んで買うしかない。欧州や中国の要求を聞いて開発した半導体を、後から選んでいる状況だ。このままではずっと遅れたまま。当社はそうならないように、RFQを自前で作成して半導体メーカーに提示していく。これが競争力になる。

半導体を内製するのでは、という声がある。一方、永守会長は「半導体事業に興味はない。半導体メーカーが供給を約束してくれれば、社内では造らない」と発言している。実際はどうか。