全3321文字

 2030年に売上高を10兆円にすることを目指す日本電産。その達成に向けて重要度が増しているのが半導体の確保だ。うまく調達できれば競争力に直結するし、逆にアキレス腱(けん)にもなり得る。重責を担う同社常務執行役員の大村隆司氏に、半導体戦略の中身を聞いた。(聞き手は久米秀尚=日経クロステック/日経Automotive、木村雅秀=日経Automotive編集長)

日本電産常務執行役員の大村隆司氏
日本電産常務執行役員の大村隆司氏
三菱電機やルネサスエレクトロニクス、ソニーグループなどで半導体事業を手掛けてきた。2022年2月に日本電産に入社。同年5月に設立した「半導体ソリューションセンター」の所長を務める。(写真:加藤 康)
[画像のクリックで拡大表示]

売上高が10兆円になったときの、半導体調達額の規模は。

 当社が調達する半導体の金額は1兆円から1兆5000億円になるだろう。この数字は民生機器や産業機器などの事業を含めたものだが、電気自動車(EV)市場の伸びを考えると車載事業の割合が増えていく。

 四輪の乗用EVだけでなく、二輪車や小型モビリティー向けの駆動用モーターの開発も進めており、こうした製品に使う半導体の調達量も多くなっていく。市場としては中国が一番大きいが、人口が増えるインドも面白い。

 当社は「待ち受け戦略」という形で、需要を見越して生産能力を用意する。2024年度には600万台分のEV向け駆動用モーターを生産できる能力を備える計画だ。

EV向けの駆動用モーターや、それをインバーターや減速機などと組み合わせた電動アクスル(eアクスル)の受注が増えていくなかで、2022年5月に新設した「半導体ソリューションセンター」が担う役割は。やはりコスト低減が最大のテーマか。

 もちろんコスト低減は大事だが、まずは半導体調達の安定化が重要だ。顧客である自動車メーカーは基本的に、安定して製品を供給できることを示さないと当社を選んでくれない。自動車メーカー自身、半導体調達で非常に困っている。

 だからこそ、当社がセンターを設立して半導体の確保に全力を挙げる姿勢を示すことには大きな意味がある。「日本電産と契約すれば、途絶ゼロで供給してくれる」という安心感があれば、当社を選ぶ確率は高い。

 自動車メーカーはみな、半導体不足で痛い目にあった。だから、どのサプライヤーのどんな品種の半導体が足りない、といった細かい分析もするようになっている。当社も「どうやって調達するのか」と具体的に聞かれることがある。

半導体ソリューションセンターの具体的な取り組みとして、半導体の集中購買や付加価値の高い半導体の開発・製造受託などを進めていく方針だ。2022年6月7日の午後、国内外の半導体メーカーを15社ほど集めて説明会を開いたと聞いている。

 中身については秘密保持の観点から言えないこともあるが、会社数はだいたいそれくらいと思ってもらっていい。ただ、説明会後に、「当社も参加させてほしい」と声を上げてくれた会社もある。

 集中購買や高付加価値部品の開発はある程度、同時並行で進めていくことになる。さらに、付加価値の高い半導体などを使って小型コンピューターを内蔵した「インテリジェントモーター」も開発する。インテリジェントモーターはソフトウエアで実現できる部分もあり、すでに実証実験に着手している。半年後くらいには、デモンストレーションを披露したいと思っている。