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 AR(拡張現実、Augmented Reality)グラス/スマートグラスは現在黎明(れいめい)期にある。コンシューマー向けARグラスで最前線を走るのが中国Nreal(エンリアル)だ。低価格で手軽に使えることから、「ARグラスの2022年上半期の出荷台数において約8割を占める」(同社)という最大手である。

 今後巨大IT企業が参入するとみられるなかで、激戦市場をどのように制していくのか。ARグラスの可能性とは。中国Nreal 副社長 兼 日本Nreal 代表取締役社長のJoshua Yeo(ジョシュア・イェオ、呂正民)氏に聞いた。(聞き手は久保田龍之介=日経クロステック/日経エレクトロニクス)

「今後は1年ごとに1つの製品を出していく計画」と明かす中国Nreal 副社長 兼 日本Nreal 代表取締役社長のJoshua Yeo氏
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「今後は1年ごとに1つの製品を出していく計画」と明かす中国Nreal 副社長 兼 日本Nreal 代表取締役社長のJoshua Yeo氏
(写真:加藤 康)

まず、ARグラスの現状をどう見ていますか。

 XR†技術がわれわれの「未来」であることは疑問がありません。スマートフォンの次(ポストスマホ)が、スマートグラスやARグラスです。

†XR=ARやVR(仮想現実、Virtual Reality)、MR(複合現実、Mixed Reality)を含めた総称。

 米Apple(アップル)や韓国Sumsung Electronics(サムスン電子)、米Google(グーグル)、米Meta Platforms(メタ)もARグラスを2023年ごろから発売されていくといううわさがあります。そうなれば、誰もが注目する技術になるでしょう。

 その前兆もあります。数年前と比べて開発者からの依頼や提案が数倍に増えているからです。

ARグラスによって、どのような未来が実現するのでしょうか。

 VR(仮想現実、Virtual Reality)は仮想的な生活を体験する手段ですが、ARは日常生活を拡張できます。

 例えば、SF映画の中でリモート会議の描写はよく出てきます。ホログラフィー(立体映像技術)を通して、実際にその場にいない人物を投影している場面です。あるいは、空中に広告や映像が浮いているような場面もよく目にします。AR技術を使えばこれらが実現できます。

Nrealはコンシューマー向けAR市場全体の約8割を占めています。どのような強みがあるのでしょうか。

 一番の強みは「ARグラスが日常的に、ファッションの一部として使える」ことを目指したデザインです。これまでの大型で重いARグラスは、日常的に装着すると周りから“浮いてしまう”ような見た目のものがほとんどでした。われわれはサングラスや眼鏡と同じように手軽にかけられるような位置づけを目指しています。

 Nrealのこれまでの製品としては、コンシューマー向けモデルで手軽に使えることを目指した「Nreal Air」や、企業・開発者向けモデルの「Nreal Light」があります。他社の多くはBtoB(ビジネス向け)を狙っていますが、われわれはBtoC(コンシューマー向け)として軽量・小型・ファッショナブルな製品を開発しています。

4万円前後で購入できるスマートグラス「Nreal Air」
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4万円前後で購入できるスマートグラス「Nreal Air」
現状はスマートフォンと有線接続して使う。カメラを搭載していないため、3DoF(Degree of Freedom)で頭の回転にのみ対応。機能を絞り、低価格で映画鑑賞などを楽しみたい顧客などに向けた。日本で先行発売している(写真:Nreal)
7万円前後で購入できるARグラス「Nreal Light」
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7万円前後で購入できるARグラス「Nreal Light」
現状はスマートフォンと有線接続して使う。これまで数十万円の価格帯だったARグラスを大幅に低価格化した。6DoFのため前後左右上下の方向に対応する。発売は2020年。別名は「Nreal X」(写真:日経クロステック)

 さらに、他社と比べて低価格で提供できていることも特徴の1つです。これは製品の生産数が多いためです。工場で自動化生産が可能なため、結果的に低価格と均等な品質を実現できています。

今後の製品展開でもその方向性は変わらないのでしょうか。

 そうです。これからさらに軽量・小型・ファッショナブルを目指しています。

 今後は可能な限り毎年新製品を出していく事を目指しています。つまり、まずは2023年の新製品の発表を見据えて開発しています。さらに2024年の製品、そして2025年の製品に至るまで開発中です。

 現状は2モデルあり、3DoF(Degree of Freedom)のNreal Airと6DoFでフル機能のNreal Lightというラインアップです。今後はエントリーやミドルエンド、ハイエンドというモデルのセグメントに分けて展開し、各々で製品を発売する計画です。

 まずはNreal Airのようなエントリーモデルで一般ユーザーへの普及を目指します。これまで、ARグラスは「聞いたことがあるけど使ったことはない」という人がほとんどの状況だったからです。

 われわれはまずARを体験してもらう入り口としてNreal Airを用意しました。その体験を通じて、もっとリッチな機能が欲しいという顧客に、Nreal Lightや次の機種を購入してもらうことを想定しています。

日本でのNreal Airの発売は世界でも先行していました。今後の日本市場の位置づけを教えてください。

 世界でも日本は一番重要な市場です。今後の製品でも日本で優先的に販売していきます。なぜなら標準規格が厳しく、AR市場への注目度が高いからです。

 日本は世界で見ても標準規格がかなり厳しい国です。翻せば、日本で製品が認められれば世界で発売しても問題がないというわけです。

 加えて、日本はNrealが提供するソフトウエア開発キット(SDK)の申請数がトップクラスです。SDK自体は英語で記述されているにもかかわらず、米国と僅差の2位でした。それほどARに注目する開発者が多い国なのです。