2018年9月6日の北海道胆振東部地震によって約60時間のブラックアウトを乗り越えたデータセンターがある。さくらインターネットの石狩データセンターだ。クラウド時代となった今、データセンターは生活の生命線ともいえる重要な社会インフラとなった。地震だけなく、極地的な豪雨や繰り返される台風被害など自然災害による停電が深刻化している。北海道胆振東部地震から1年がたった今だからこそ語れる、ブラックアウト後の対応をはじめ、事業継続計画(BCP)の本質やエネルギー利用のあり方について、さくらインターネット 代表取締役社長の田中邦裕氏に聞いた。(聞き手:狩集 浩志=日経BP総研)
2018年9月18日に起きた北海道胆振東部地震のブラックアウトによって何が起きたのでしょうか。

まずはデータセンターの設計思想が時代とともに変化していることを知っておいてもらいたい。石狩データセンターは、クラウド型データセンターの先駆け的な存在として2011年11月に開所した。2010年に同センターを設計したときは、まだクラウド化が始まっていない時代であり、1号棟はサーバーを100台ずつのモジュールごとにゾーンとして増やしていく思想だった。そのため、発電や空調設備もゾーンごとに設置し、設備に障害が起きてもゾーン内でとどまり、モジュール間で影響を与えない設計にしていた。
しかし、2013~2014年ごろから「クラウドといえども止まったら困る」という時代の流れとなり、2015年からはゾーンごとではなく、“N+1”の冗長化の設計に切り替え始めた。こうした中、北海道胆振東部地震では、停電となった際にゾーンで1対1対応させていた非常用発電機が自動起動しなかったため、一部のサーバーで障害が起きた。発電機の故障ではなく、制御に不具合があった。非常時を想定した手動での切り替え試験は保守・点検時に実施していて問題はなかった。だが、実際にサーバーが稼働している中で電源を止めて発電機が自動起動するかどうかのフル負荷での試験は実施していなかったため、制御の不具合に気づかなかった。結果的には手動にて発電機を起動することになってしまった。
非常時を想定し、実際に稼働しているサーバーを使って大元の電源を切るという訓練は、「ユーザーの理解を得られにくい」として業界全体でこれまで実施してこなかった。しかし、今回のブラックアウトを通じて、改めていかなければならないと思っている。