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新型コロナ拡大を契機に加速

 こうした変革期に、新型コロナの拡大という、まさに「予期せぬ」事象が発生しました。好むと好まざるとにかかわらず、多くの企業がこの緊急事態に対応するためにデジタル化を進めざるを得なくなりました。

 通信ネットワークを活用したリモートワークは当たり前。従業員間での感染拡大を防止するための工場の自動化や働き方改革も今後、一層進められるでしょう。期せずして社会全体が「DX待ったなし」という状況になったわけです。

 「そうは言っても、どうすればDX導入などのデジタル化を図れるのか」という疑問の声も、特に資金に余裕がない中小企業の経営者からよく耳にします。こうした課題に政府は手をこまぬいてはいません。例えば、中小企業庁は2020年9月、「中小企業デジタル化応援隊事業」を始めています。フリーランスのIT専門家などを「中小企業デジタル化応援隊」として選定。デジタル化に取り組む中小企業とのマッチング事業を実施しています。

 「中小企業生産性革命推進事業の特別枠」として2020年度の補正予算で700億円を確保しています。新型コロナの影響を受けて、リモートワーク環境の整備に取り組む事業者によるIT導入などを支援する方針です。

 予算だけでなく、デジタル技術の活用に必要な観点も示しています。2020年3月に公表した「製造業 DX レポート 〜エンジニアリングのニュー・ノーマル〜」はその1つです。

写真:加藤康
写真:加藤康
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 このリポートでは、デジタル技術を活用するには、[1]企業としての経営方針や経営目標を踏まえてデジタル変革への方針を定める、[2]自社の工程ごとの機能の可視化やコスト構造を把握する、[3]熟練技能者など従業員が持つ知見やノウハウを発掘し、データベースなどデジタル化する、[4]BOM(部品表)の共有や3D-CADの活用などデータ共有のための仕組みを整備する、[5]デジタル化に取り組む人材や仕組みを確保・構築する、という5つの観点を示しました。

 これら施策が目指すゴールは、日本の製造企業がデジタル技術を操って世界中と情報をやり取りし、通信ネットワークを介して直接注文を受けたり、3D-CADで効率的な設計を進めたりする状況です。この目標に向かって経産省ができることは全部します。