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横河電機は、製造業のDX(デジタルトランスフォーメーション)のコンサルティングやシステム提案を提供する新会社として横河デジタル(東京都武蔵野市)を2022年7月に設立した。横河電機グループが培ってきたプラント操業支援をはじめとする製造業のノウハウと、人工知能(AI)やクラウドといった技述を組み合わせたソリューションを提供するという。社長に就任したのは、横河電機で技術者としてAI技述の開発を主導してきた鹿子木宏明氏。同氏に新会社設立の狙いや今後の戦略について聞いた。(聞き手は小林由美facet、吉田 勝=日経クロステック/日経ものづくり)

 2022年7月に横河デジタルを設立しました。プラントや製造業に対して経営視点に立ってDX(デジタルトランスフォーメーション)のコンサルティングサービスや、ITとOT(制御・運用技術)のソフトウエアサービスを展開するのが我々のミッションです。顧客の事業戦略を踏まえた上で、DX推進のコンサルティングから、クラウドに関するシステムの実装、運用・保守までを一貫して提供します。

 横河グループとしては、かねて製造業DXを支援する取り組みを展開してきました。例えば産業用クラウドプラットフォーム「Yokogawa Cloud」や、ITとOTのためのセキュリティー監視サービス「OpreX IT/OT Security Operations Center」などを開発・提供しています。

横河デジタル代表取締役社長 鹿子木 宏明氏
横河デジタル代表取締役社長 鹿子木 宏明氏
(写真:加藤 康)
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スピーディーな意思決定のため独立

 これまでも、横河電機では、DXコンサルティングを希望する顧客に対しては、横河ソリューションサービス(東京都武蔵野市)が窓口となって、ITとOTのコンサルティングやエンジニアリングサービスなどを提供してきました。これからは、横河デジタルも加わり、横河グループとしての力を高めてサービスを提供していきます。

 経営と直結するDXのコンサルティングサービスを、新会社の横河デジタルが担うことにしたのは、スピーディーな意思決定を進めるためです。というのも、DXを目指す顧客のスピード感が、従来のITとOTの相談案件とは格段に異なってきているのです。

 DXの取り組みにおいては、スピード感が非常に大事です。我々としても、機動力をもって顧客のDXを迅速に支援していきたい。IT関連企業への投資やアライアンスなどに積極的に取り組んでエコシステムを構築し、投資などの意思決定をスピードアップさせて新しいビジネスモデルの早期確立を目指していきます。

環境対応などで「最適化の対象が変わってきた」

 現在、プラント業界や製造業は、グローバル競争の激化やコストダウン要求の圧力にさらされています。加えて、人材不足、老朽化した設備の対応といった課題にも直面しています。材料や半導体などのサプライチェーンのグローバルでの混乱や、サステナビリティー(持続可能性)への対応も喫緊の課題です。

 そうした複雑な状況下で、日本のプラント・製造業が長年、徹底的に取り組んできたものづくりの最適化の対象が大きく変わってきています。

 かつては、「品質とコストの最適化」「安定供給網を前提としたプラントや工場内の在庫やリードタイムの最適化」に徹底的に取り組んでいました。これまでの日本のプラント・製造業は、そのような研ぎ澄まされた最適化で発展を遂げてきたといえます。同時に、そのような最適化の技法を次世代に脈々と継承する文化もありました。

 それが品質やコスト、リードタイムの最適化にとどまらず、「脱炭素経営・環境問題の解決」や「グローバルサプライチェーンでのレジリエンス(強じん性・柔軟性)確保」も重要なテーマとなりました。品質やコストの削減に徹底的に取り組むことが二酸化炭素(CO2)の削減につながるとは限りませんし、リードタイムを短縮しても入手困難な部品が手に入るようにはなりません。技法の継承については、継承する人そのものが不足してしまっています。

 つまり、品質やコスト、納期といった各工場や企業単位での個別最適から、環境やサプライチェーンといった企業間連携まで含めた全体最適が求められるようになっているのです。そうした中で、ものづくりの現場は、「何をどうしたらいいのだろう」と戸惑っているのが今の状況ではないでしょうか。