太陽光発電に次いで、固定価格買取制度(FIT)によって急速に増えたのがバイオマス発電だ。特に木質チップやパーム油など海外産の燃料を使った発電所の認定が急増し、稼働し始めている。一方で、輸入バイオマスによる発電事業に関しては、エネルギー自給に貢献しないなど、その推進に懐疑的な見方も多い。FITスタート以前から、バイオマスのエネルギー利用を調査・分析してきたバイオマス産業社会ネットワークの泊みゆき理事長に、バイオマス発電の課題と今後の在り方について聞いた。
パーム油発電に批判も
再生可能エネルギーを支援する固定価格買取制度(FIT)の抜本的な見直しが始まり、今後、バイオマス発電の扱いが議論になりそうです。
泊 一概に「バイオマス発電」と言っても、様々な燃料や発電手法があり、それが議論を複雑にしています。現在、環境団体などが最も問題にしているのが、海外から輸入したパーム油を使ったバイオマス発電です。
パーム油については、食用を主体に利用されてきた当時から、生産時における熱帯林の保全や地域社会に悪影響を及ぼさないなどの「持続可能性」が課題とされ、そうした考え方を推進する非営利組織(NPO)「RSPO(The Roundtable on Sustainable Palm Oil)」による第三者認証が重視されてきました。
国内の発電燃料に使う場合でも、こうした第三者認証を求めることになっています。現在、議論になっているのは、認証制度のなかでも、政府主導で作られ、PSPOより基準が“緩い”とされる制度による認証も認めるかどうか、という点になっています。
バイオマス燃料の「持続可能性」では、温室効果ガス(GHG)の削減効果も大きな論点になっています。
この点は、国の有識者会議(総合資源エネルギー調査会 新エネルギー小委員会 バイオマス持続可能性ワーキンググループ)でも議論され、栽培や加工、輸送に伴う排出を加味した「ライフサイクルGHG」の試算結果を公表しました。これを見ると、パーム油発電は、石炭や石油火力よりはGHGが減るものの、高効率な天然ガス火力に比べると、GHGが増えるという結果になっています。また、木質バイオマスでさえ、北米東海岸産の丸太からの木質チップのGHG排出量は、高効率ガス火力より多くなっています(図1)。