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 ホンダの航空機事業子会社である米Honda Aircraft Company(ホンダエアクラフトカンパニー、HACI)は米国時間2021年10月12日、ビジネスジェット機「HondaJet(ホンダジェット)」シリーズのコンセプト機「HondaJet 2600 Concept」を発表した。同日開幕したビジネスジェットの展示会「2021 NBAA-BACE」(以下、NBAA)でプレスカンファレンスを開催。同社社長兼CEOの藤野道格氏が登壇し、その特徴をアピールした。日経クロステックは現地で同氏にインタビュー。ビジネスジェット業界における同機の位置付けや、同業界を取り巻く環境などについて語った。発言の趣旨は以下の通りである。

HACIの藤野社長
HACIの藤野社長
後ろにあるのが、NBAAのブースに展示した「HondaJet 2600 Concept」の実物大モックアップ(撮影:日経クロステック)
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 HACIが持つ複数の要素技術を結集すると、今までにない機体を造れる。それが「HondaJet 2600 Concept」(以下、2600)であり、その価値を市場に問うためのコンセプト機という位置付けです。ただし、コンセプト機と言っても、詳細な解析や実験などに基づいていて製造可能なものです。

 2600では、主翼上面へのエンジン配置や自然層流翼(NLF)、自然層流ノーズ、一体成型の複合材製胴体といった、これまでのホンダジェットで適用した要素技術、あるいはそれ以上のものを積み重ねることで、「ライトジェット機」として長い航続距離と高い燃費性能を実現できました。最大航続距離は2625海里(約4862km)で、従来のライトジェット機に比べて600海里(約1111km)ほど長い。(ライトジェット機より1つ小さいクラスの「ベリーライトジェット機」である)これまでのホンダジェットも燃費のいい機体でしたが、それに一層磨きをかけることで、(ライトジェット機よりも1つ大きいクラスで航続距離が長い)中型ジェット機の領域にまで達することができました。

燃費の比較 2600では、一般的なライトジェット機に比べて20%、中型ジェット機に比べて40%以上の燃費向上を図る(撮影:日経クロステック)
燃費の比較 2600では、一般的なライトジェット機に比べて20%、中型ジェット機に比べて40%以上の燃費向上を図る(撮影:日経クロステック)
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 加えて、電動化を進めることで、燃費性能を上げています。例えば、ランディングギア(降着装置)やスポイラー(主翼にある揚力を小さくする装置)、フラップ(主翼にある揚力を大きくする装置)といった部分を動かすアクチュエーターを油圧式から電動式にしています。

 制御部分にさまざまな新しい技術を導入している点も、他のライトジェット機に比べて進んでいる部分だと思います。ブレーキをステア・バイ・ワイヤで制御し、離着陸しやすくしています。オートパイロット機能も、よりチューニングしていますし、着陸時のオーバーランを防止する機能も備えるなど、従来のホンダジェット以上の制御技術を搭載しました。

新型機に搭載する制御技術
新型機に搭載する制御技術
主に、パイロットの負荷軽減を図っている(撮影:日経クロステック)
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