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 三精テクノロジーズが主体となり、2022年9月に開発した人が乗れる巨大4足歩行ロボットは、組み立て後わずか1週間程度で歩き始めた。その歩行をつかさどるのがアスラテック(東京・港)のロボット制御用ソフトウエア「V-Sido(ブシドー)」だ。同ソフトの開発者で同社取締役チーフロボットクリエイターの吉崎航氏に巨大4足ロボットを動かすまでの道のりを聞いた。(聞き手は、岩野 恵=日経クロステック/日経ものづくり、中道 理=日経クロステック/日経エレクトロニクス、吉田 勝=日経クロステック/日経ものづくり、東 将大=日経クロステック)

なぜ三精テクノロジーズと4足歩行ロボットを開発することになったのですか。

 三精テクノロジーズの方々と初めて出会ったのは、クルマ型から人型に変形可能な2足歩行ロボット「J-deite RIDE(ジェイダイト・ライド)」を造るプロジェクトです。そのご縁で、三精テクノロジーズから「2足の次は4足歩行のロボットを造ってみたい」という話がありました。私は小さい4足のロボットを既に独自で何種類か造っていたので、その技術も生かす方向で今回の4足歩行ロボットの開発に携わることになりました。

アスラテック取締役チーフロボットクリエイターの吉崎航氏
アスラテック取締役チーフロボットクリエイターの吉崎航氏
(写真:日経クロステック)
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三精テクノロジーズは「面白い案件しかない」

 三精テクノロジーズの案件で乗り気じゃないものはないですね。面白いものしかないし、覚悟が求められます。どこまで本気だったのかは分かりませんが、三精テクノロジーズから「2足歩行を造れたから、その脚を前後に並べれば4足になるだろう」と言われたのがちょっと面白かった。2足を造るだけでも大変です。彼らはJ-deite RIDEの開発で一緒に苦労してきた間柄。4足歩行ロボを造るとなると2足の2倍は大変だと分かっているはずなので、この覚悟はすごいと思ったのを覚えています。

クルマ型から人型に変形可能な2足歩行ロボット
クルマ型から人型に変形可能な2足歩行ロボット
2018年にクルマ型から人型に変形可能な2足歩行ロボット「J-deite RIDE」を開発した 。写真はJ-deite RIDEの改良版で2022年に完成した「SR-01」。(写真:三精テクノロジーズ)
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2足を2台つなげて4足にするという発想はロボット技術者からするとどうですか。

 そんなわけはないだろうと。2足と4足の歩き方は根本的に違います。人間が2人で物を持って歩くとき、4足動物のような歩き方はしませんよね。人間が両腕を下ろしても4足では歩きにくいし、逆に4足歩行している動物が突然立ち上がって1日中立ったまま過ごすこともできない。つまり、2足、4足それぞれに最適化された骨格や筋肉の付き方があるのです。

 4足歩行の開発では、2足歩行での知見を生かしている部分はあると思いますが、やはり別物です。例えば2足歩行ロボの膝には、平行四辺形の形にリンクを組んだ平行リンクを使っています。腰と膝と足裏を常に平行に保ち、上半身のコックピットが傾かないようにして安全を確保しています。でも、4足歩行ロボは4本の脚で支えるので、平行を保つ必要はありません。リンク機構を無くす代わりにモーターを増やし、剛性を高め、滑らかに好きな方向に動けるようにしています。モーターの種類も2足歩行ロボとは変えていますし、三精テクノロジーズは2足とは別物レベルで4足歩行ロボットの知見をためているのではないかと思います。

三精テクノロジーズが開発した4足歩行ロボット
(動画:寺田治司)

ロボットを動かすアルゴリズムは4足歩行ロボット用に新たに開発しているのでしょうか。

 実は2足も4足も我々のV-Sidoというソフトウエアで動きを制御しています。V-Sidoは6足などに脚が増えても対応可能です。パラメーターが20個以上あり、それらを少しずついじると、犬型の4足ロボットのような歩き方も、1本ずつ脚を上げるような歩き方もできます。なので、基本的なソフトウエアは従来通りです。ただし、ロボットの「動き」という意味では4足用に全く新しく開発したとも言えます。巨大ロボットとして組み立てる前の1本足の段階など色々な現場で随時試しながら、チューニングを行いました。

V-Sidoを搭載したロボットをコントローラーで操作する様子
V-Sidoを搭載したロボットをコントローラーで操作する様子
(写真:日経クロステック)
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