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ディスプレーパネル生産の中心地はもはや中国になった。これに続いて半導体向けの投資が中国で急激に増えている。日本の製造装置/材料・部品メーカーは、投資が行われる場所でビジネスを拡大してきた。今後の中国市場をどう見ていくのか、中国でビジネスを行なうルールはあるのか。また、足もとの装置市場が一時的な調整段階にある中で、引き続き莫大な開発投資を続けることができるのか。難しい舵取りを求められる現状をどう乗り越えるのか、東京エレクトロン会長の常石哲男氏に聞いた。(山口健=日経BP総研 クリーンテックラボ)

(前回「東京エレクトロン会長の常石哲男氏に聞く(上)」)

 中国は人口もさることながら市場も大きく、戦略的にも重要な市場だと思います。特にフラットパネル向けの製造装置は、中国がメインの市場になりました。5G(第5世代移動通信システム)を迎えるこれからの時代は、半導体の市場の拡大も生産も中国から立ち上がる可能性が十分あります。当社は地球全部が1つの市場だと見ています。ですから日本市場、海外市場という見方はあまりしない。ニーズが中国などにシフトしたら市場の拡大に応じて現地でビジネスを拡大します。

「フェアネス」がビジネスの大前提

東京エレクトロンの常石哲男氏
東京エレクトロンの常石哲男氏
東京エレクトロンの常石哲男氏 1952年生まれ。1976年大阪大学工学部通信工学科を卒業、同年に東京エレクトロン入社。1992年取締役、1996年専務取締役、1998年代表取締役専務、2003年取締役副会長、2015年取締役会長、2017年から代表取締役会長(現職)。2017年からSEMI (Semiconductor Equipment and Materials International)の会長も務める。(写真:吉成大輔)
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 ただこの業界には大原則があり、いろいろな意味でのフェアネスが大切です。フェアなビジネス、それからトレードに関してもフリートレードで、かつ知的財産(IP:Intellectual Property)を競争の中でも尊重しなければならない。フェアなビジネスというのは色々な意味があり、IPは特に重要です。もし他社のIPを使うならライセンスを申し込む。ライセンスを申し込まなければ使わない。申し込んでも、ライセンスされなければ使わない。こういうことがハイテクビジネスの常識であり、世界のルールです。

 フェアというのはビジネスのみならず、人に対しても、基本的にフェアでなければならない。フェアである限りは、まわりの多くの人から、外部からも中からもリスペクトされます。フェアでない場合は中長期的にはなかなか伸びません。非常にラッキーなことと考えていますが、この業界ではフェアに評価され、フェアに競争し、そして良いものが売れる。しかも付加価値がキチンと価格に反映されるので、そこにはフェアビジネスを貫いて相互の信頼で成り立っているエコシステムがあります。

 米国も、フェアネスがある限りは中国でビジネスを拡大すると思います。

 中国の新興企業がNANDフラッシュメモリーやDRAMの生産に大きな投資を計画しています。米国の装置メーカーも、材料メーカーも、必死でそこにオーダーを取りに行っているという状態ですから、我々も同じようにフェアに戦っているところです。