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 マツダの次世代エンジン群の輪郭が見えてきた。「アップサイジング」(大排気量化)エンジンの投入や発電用ロータリーエンジンの復活、希薄燃焼エンジンの量産計画、次期ディーゼルの開発も進む。本格ハイブリッド開発と距離を置き、“非常識”路線を歩むマツダ。「天才エンジン技術者」と称される人見光夫氏(常務執行役員・シニア技術開発フェロー)に針路を聞いた。

かねて主張してきたアップサイジング。「ライトサイジング」(排気量の適正化)と呼ぶ声もありますが、他社が追随してきました。

 私はライトサイジングとは言ってませんよ。10年以上前から、各社が排気量を増やして、そのうちアップサイジングするだろうとは言ってましたけど。

 ライトサイジングと言い始めたのは、ドイツ自動車メーカーです。「ダウンサイジング」(小排気量化)した後、やっぱり排気量を増やすときにアップサイジングではなくライトサイジングと言いました。

 だから2015年に欧州のエンジン国際会議で私が講演したときに、最後に「ライトサイジング・イズ・アップサイジング」と皮肉たっぷりに言ってやりました(笑)。皆さん排気量を小さくし過ぎたので、適正化とはすなわちアップサイジングなんですよね、と。

人見光夫氏
人見光夫氏
マツダ常務執行役員・シニア技術開発フェロー(技術研究所・統合制御システム開発担当)(写真:加藤 康)

 言った通りになったわけですが、別に嬉しくも何ともないですよ。そりゃあ、(広島東洋)カープが勝つ予測や(カープの主力打者である)鈴木誠也がホームランを打つ予測を当てたほうがはるかに嬉しいわけです。アップサイジングを当てても金になりません。まあ、カープが勝ったら楽しくて飲み代がかさむというのはありますけど。