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 マツダの人見光夫氏(常務執行役員・シニア技術開発フェロー)に聞くエンジン開発の針路。後編は、次世代機の進捗に焦点を当てる。希薄燃焼(リーンバーン)を実現する次世代ガソリンエンジンや大排気量化するディーゼル、さらにロータリーの開発状況を聞いた。

2019年に投入する次世代車両から、希薄燃焼(リーンバーン)を実現する次世代ガソリンエンジン「スカイアクティブX」を搭載する計画です。2018年9月に車両の生産を始めました。スカイXの量産はそろそろ始まりますか。

 既に量産を始めている車両のエンジンは従来のスカイアクティブで、次世代のスカイXの量産はまだこれからです。なかなか大変なんですよ。

次世代ガソリンエンジン「スカイアクティブX」の試作機。排気量は2.0L。空燃比で30を超える超希薄燃焼を実現する。簡易ハイブリッドで、BSG(ベルト式スターター兼発電機)を搭載する。BSGの電源電圧は数十Vになる見込み。(出所:マツダ)
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次世代ガソリンエンジン「スカイアクティブX」の試作機。排気量は2.0L。空燃比で30を超える超希薄燃焼を実現する。簡易ハイブリッドで、BSG(ベルト式スターター兼発電機)を搭載する。BSGの電源電圧は数十Vになる見込み。(出所:マツダ)

スカイXの排気量は2.0Lにとどめており、「アップサイジング」(大排気量化)しませんでした。

 いやあ、うーん、2.0Lのカベというものがありまして。排気量を大きくしたいのですけれど・・・・・・。

 なんだか、いまだに3ナンバーの営業車でお客さんのところに行くのはダメ、みたいな風潮がありますよね。開発部門としては、営業部門がクルマを売るのに邪魔になることはできません。そうなると(5ナンバーに入る)2.0L以下にとどめて、というふうになるわけです。

 心情的というか、不文律というか、もう技術最適や理屈じゃないんです。2.2Lじゃダメなんです。2.0Lを区切りに税額も増えますし。

もっと排気量を増やしたかった。

 排気量を増やすと、リーンバーン(希薄燃焼)領域を簡単に広げられるわけですよ。排気量を増やすだけならタダみたいなもの。タダで燃費を良くできるわけで、もうちょっと大きくしたいという思いはありますよね。

人見光夫氏
人見光夫氏
マツダ常務執行役員・シニア技術開発フェロー(技術研究所・統合制御システム開発担当)(写真:加藤 康)

 このクラスの車両であれば排気量はなんとなくこれくらい、という風潮があるじゃないですか。その風潮よりは大きくしたいんです。

 もちろん、むやみに排気量を増やして図体が大きくなり、車体に載らないのでは意味がないんですよ。だけど車体に収まる範囲で増やしたいという考えはずっとあります。

2.0L以上のスカイXも準備していますか。

 技術的には、排気量を変えることはできます。市場の要望に応じて、というところでしょうか。ただまあ、そう何種類も造れませんけどね。