スマートホームの標準化規格「Matter(マター)」のバージョン1.0の仕様が、2022年10月4日(米国時間)に公開された。米国のApple(アップル)、Google(グーグル)、Amazon.com(アマゾン・ドット・コム)など世界の有力企業が協力して推進したMatterは、これまで理想が先走っていたスマートホームを普及させる原動力になるのか。Matterの通信に使われるBluetooth Low Energy(BLE)やThread対応チップの開発で世界をリードするノルウェーの半導体メーカーNordic Semiconductor(ノルディックセミコンダクター)に聞いた。取材を受けたのは、同社でEVP(Executive Vice President)Sales and Marketingを務めるGeir Langeland氏と、VP(Vice President)を務めるBob Brandal氏である。(聞き手:青谷 悠平=日経クロステック)
10月4日に「Matter1.0」がリリースされましたが、Matterは市場をどう変えていくのでしょうか。
Bob 氏 スマートホームでは過去にさまざまな標準化規格が策定されてきました。その中でMatterは、アップルやグーグル、アマゾン・ドット・コムなどが規格化を先導してきました。Matterでは小型の機器もTCP(Transmission Control Protocol)/IP(Internet Protocol)に対応することで、デバイス同士がすべてつながる環境が構築されます。これまでは、下位から上位のレイヤーまですべて共通化されている規格はありませんでした(図1)。その点で画期的なスタンダードと言えます(図2)。
Geir氏 これまではベンチャーなど小さな企業が革新的なスマートホーム製品を開発しても、大手企業が開発した他の機器と接続するためにはゲートウェイ(異なるネットワーク同士を中継する仕組みの総称)製品などが必要でした。しかしMatterが普及することで、ゲートウェイが不要になります。
Matterの規格を決める中で御社はどのような役割を果たしたのでしょうか。
Geir氏 弊社は2011年ごろからBluetoothチップセットの販売を始めており、ThreadやZigBee対応チップセットの販売も手掛けています(図3)。
そうした技術を使った製品を開発している企業とずっとビジネスをしてきたので、顧客情報を豊富に持っています(図4)。そこで知ったのは、規模が小さな企業もアマゾン・ドット・コムやアップルなどの大企業の製品とつながりたいと考えていたことです。こうした情報は、Matterがどうあるべきかを検討する際に役立ったと思います。