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 エンジンの印象が強いマツダが、電動化に力を注ぎ始めた。電気自動車(EV)やプラグインハイブリッド車(PHEV)の開発状況、欧州環境規制対策の実情、世界で加速し始めたカーボンニュートラル(炭素中立)化への考えについて、マツダ副社長執行役員の藤原清志氏に聞いた。(聞き手は清水 直茂=日経クロステック)

中央が2022年に投入予定のPHEVシステム、その両横が直列6気筒エンジン
中央が2022年に投入予定のPHEVシステム、その両横が直列6気筒エンジン
(出所:マツダ)
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2020年11月9日の中期経営計画の見直しで、EV専用プラットフォームの自社開発の検討を始めると発表しました。

 当社は30年時点で生産する全ての車両を電動化すると宣言しました。(21年度までに)その中核技術が全てそろいます。(高効率ガソリンエンジンの)「スカイアクティブX」やマイルドハイブリッド車(MHEV)、(エンジンを縦置きする)「ラージプラットフォーム」、PHEV、直列6気筒エンジンなどです。

 そこで(22年度から)次のステップに進み、EVが普及する時代に備えようと考えているのです。我々は他社のように、全ての技術を一斉に手掛けられませんので、順に進めるわけです。

中期経営計画の期間内(20年3月期~26年3月期)に、EV専用プラットフォームを量産するのですか。

 いやいや、そうは言ってません(苦笑)。EVプラットフォームの開発に「着手する」という意味であって、量産するとは言ってません。35年、40年という長い期間を見据えてどうするのか考えていきます。

マツダ副社長執行役員の藤原清志氏
マツダ副社長執行役員の藤原清志氏
(写真:橋本正弘)
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マツダの規模でEVプラットフォームを単独で開発して、投資を回収できますか。資本提携しているトヨタ自動車から供給してもらう選択肢はなかったのでしょうか。

 我々はこの地(広島県や山口県)で80万~90万台の車両を生産しています。EVが普及する時代がくれば、ここで生産している車両がEVに変わることを意味します。ここで造るものを考えておかないと、どこで雇用を生むのですか。トヨタさんからプラットフォームの供給を受けると、今の規模の人を雇えません。独自のものを造らないと駄目なんじゃないのか、というのが我々の考えです。

 皆さんにあまり注目していただいておりませんが、長年にわたって生産、設計の改革を進めてきました。「コモンアーキテクチャー」「一括企画」「フレキシブル生産」「モノ造り革新」「MBD(Model Based Development)」「MBR(Model Based Research)」などです。

 最近では、EVの基盤を開発する「EV C.A. Spirit(EVCAS、EVキャス)」の成果もあるわけです。大きな投資をしないで、プラットフォームを開発できるようになっています。

トヨタやデンソーなどと共同で設立したEVCASを、20年6月末に解散しました。どんな成果がありましたか。

 解散ではありません。終わったのです。解散というと何も成果がなかったとみる人がいるので、終わったと言っています。

 EVCASではハードウエアを造っていたわけではなく、EVの電池量や航続距離、出力、車速などを計算機で検討できる解析モデルを開発しました。この成果をEV専用プラットフォームの開発に生かします。

 EVCASには各社から70人近くの技術者が集まりました。当初の予定である2年間から少し延びて2年9カ月間かかりましたが、それでも短期間にかなりのものができたと思っています。最後はみんなとてもハッピーに終わりました。成功して、そして終了したと理解してください。