米マイクロソフトのクラウド事業の年間売上高は4兆円に迫る勢いである。2015年時点の4倍以上の数字だ。マイクロソフトをWindowsからクラウドの会社へと変身させたのが、サティア・ナデラCEO(最高経営責任者)。世界を代表する変革者が、日経 xTECH単独インタビューで語ったこと。
(聞き手は戸川 尚樹=日経 xTECH IT 編集長、大和田 尚孝=日経 xTECH/日経コンピュータ)
ナデラCEOの大きな功績の1つは、マイクロソフトを「Windowsの会社」から「クラウドの会社」へと変身させたことだと言われています。
世の中の変化を利用しつつ、変化に対応する。これは、マイクロソフトに限らず、あらゆる企業に求められることです。
マイクロソフトの場合、「未来は分散コンピューティングに向かっていく」ということが、はっきりと見えていました。世界中の人々がコンピューターリソースをより効率的に活用しやすい世界を、作らなければならなかったわけです。
こうした使命を果たすために我々が開発したのが、クラウドサービス「Azure」です。当社は「Azure Sphere」や「同 Stack」など、用途に応じて様々なサービスを用意しています。いずれも顧客が実現したいことの基礎となるものと考えれば、我々は未来を見据えて「新しいWindows」を作ったということになります。
強烈な成功体験がある会社だけに、抵抗勢力も大きく、変革はかなり難しかったのではないかと思います。実現のポイントは何ですか。
会社や組織にとって重要なことは、新しいコンセプトを継続して考え続けることです。クラウドコンピューティングのような新コンセプトを実現するためには、それまでの前提や枠組みを見直す必要がある。
例えばWindowsはマイクロソフトにとって重要な製品であることに変わりはありません。ただし、「Microsoft 365」やAzureなどの一部になったという点では、位置付けを変えています。
では、どのようにすれば新しいコンセプトを生み出し続けることができるのか。まず社員個人については、エンジニアやデザイナー、営業担当者などの職種に関係なく、個々が新たな能力やスキルを磨き続ける必要があります。
組織としてやるべきことは、文化の変革です。私が最も重視して、マイクロソフトで進めたこともこれです。「全てを知っている」という姿勢から、「あらゆることについてもっと学ぼう」という文化へと変えなければなりませんでした。
会社の文化が変わると、新しい能力やスキルを獲得できる。それが新たなコンセプトや製品・サービスを生み出す原動力となるのです。