Miller Chang氏
Miller Chang氏
台湾Advantech, President, Embedded IoT

 エッジコンピューティング領域において、深層学習(ディープラーニング)技術をはじめとする人工知能(AI)の活用ニーズが高まっている。クラウドよりも制約の多いエッジで、その実行環境として注目されているのがボードPCだ。台湾Advantech(アドバンテック)で組み込み分野のIoT(Internet of Things)事業を統括するMiller Chang氏(President, Embedded IoT)にエッジAIの戦略を聞いた。(聞き手は高野 敦=日経 xTECH/日経エレクトロニクス)

エッジAIのニーズが高まっている。Advantechはどう対応するのか。

Chang エッジで特にAIの推論処理を実行したいというニーズを取り込むために、FPGAなどのアクセラレーションデバイスを搭載したボードPCを提供していく。先日、米Intel(インテル)の画像アプリケーション開発環境「OpenVINO」にAdvantechとして正式に対応する方針を明らかにした。OpenVINOでは、推論処理の実行環境としてFPGAやVPU(Visual Processor Unit)といったアクセラレーションデバイスの利用が前提になっている。Advantechは、そのような実行環境としてのAIソリューションの準備が既にできている。

AIの活用に苦労するユーザーやパートナー企業も出てくるのではないか。Advantechとしてどう支援するのか。

Chang エッジAIでは、個別市場ごとの攻略が重要になる。一口にエッジAIといっても、その目的は大容量動画の処理、産業用ネットワークにおけるプロトコル変換、振動解析など多種多様だ。これらの市場ごとにハードウエアやソフトウエアのソリューションを確立し、ニーズにきめ細かく対応していく。

Advantechの従来のビジネスモデルは、ボードPCや産業用PCといった汎用性の高いハードウエアを広く販売するというものだった。たくさんの個別市場をカバーする体制はあるのか。

Chang 確かに、我々にとってチャレンジングな取り組みだ。もともとAdvantechは水平的な組織だったが、FAや交通、小売、医療などの個別市場に対応できるように数年前から組織を少しずつ変えてきた。

 IoTでは、特定の個別市場に強いパートナー企業の存在が鍵を握る。特にソフトウエアのパートナー企業が必要だ。そういう点で、多くのパートナー企業を引き寄せるエコシステムの構築が重要になっている。エコシステムに関しては、Advantechだけ良ければいいという考えではなく、パートナー企業のエコシステム構築にも貢献していきたい。