サービス化は全員が関わる
私は「経済のサービス化」についてずっと考えてきました。考え始めたのは日本アイ・ビー・エム(日本IBM)の研究所にいたころ。2002年にIBMがコンサルティング会社を買収して、研究者とコンサルタントが組んで顧客の問題を解決する形の新しいイノベーションを生み出そうという実験活動が始まったときです*2。それまでのパーソナルシステムズという「もの」の研究から、サービスの研究へとシフトしました。
「もの」の経済では、「もの」をちゃんと作って、他のものやお金と交換すればよかった。交換価値(Value in Exchange)の経済でした。それが一歩進んで、ものを顧客がいかに使うかが重要になってくる。使う人が本来やりたいことを実際に達成できているか。そこまでの面倒を見るのが、経済のサービス化です。
経済のサービス化においては、ものの交換価値ではなくて使用価値(Value in Use)、使ってなんぼが価値の見方になります。そこまで企業の価値提供が広がると、DXの出番です。IT化されるとデータがたまってきて、今までのアナログな観察だけでつかもうとしていた状況や振る舞いが、データでも分かってくる。そうなると、加速度的に顧客体験を改良できる。使用価値を向上できるわけです。
重要なのは、顧客は製品やサービスの提供者とさまざまな接点、タッチポイントを持っている事実です。例えば、CMでその製品を知るかもしれない、あるいは雑誌で見るのかもしれないしSNSの口コミかもしれない。買った後、分からないことをQAサイトに質問するかもしれない。修理会社の窓口に連絡するのも、修理会社の担当者が来て修理してくれるのもタッチポイントです。
製品のメーカーはそれらを全部自分だけでやってはいません。しかし顧客は複数のタッチポイントを通して価値を感じています。メーカーは顧客から見える流れを統合して、満足感のある体験にする必要が生じるわけです。
そう見ていくと、顧客に接する、あるいは顧客に価値を与える人たちがみんな関係してくる。お互いに視点を広げて連携するのが当然のはずなのです。