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製品を使う前後を含めて、顧客が本当にやりたいことを支えられるか。そこまで面倒を見るのがサービス化の考え方、と説くそのサービス化は、技術に支えられなければ効率が悪く、1社では完結しないから多くの関係者と共創する必要がある。そこでは技術を持つ人こそが価値を提案し、未来をつくっていける。自らの枠を広げて、技術を核に他者と連携するのが技術者の役割という。(聞き手は木崎健太郎)

写真:加藤康
写真:加藤康
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 日本と米国のイノベーションを研究して大きな違いがあると分かったのは、隣の部門や外部の企業の力をどれだけ利用しているか。日本は個人や部門内の、狭い範囲の知識しかほぼ利用していないのです。

 例えば、工作機械メーカーの立場だったら、顧客の工場は他社製の機械も組み合わせて使っています。自社が売った機械の前後にさまざまな工程があって、さまざまな設備がある。そうすると、顧客が実現したい加工や製造を提供する上では、前後の機械や設備のメーカーなどと協力する方が、大きな価値を生めるはずです。

 他部門や他社との関係性、これを社会関係資本と呼びますけれども、米国はその社会関係資本を使って革新的なイノベーションも、持続的なイノベーションも起こしている*1。調査してみて大変に残念だったのは、もともと知り合いだとか、他企業の知っている人だとか、日本にもインフォーマルな関係性がいろいろとあるはずなのに使っていない現状でした。さらに残念に思うのですが、私の外国人の友達から「なんで日本人同士は仲が悪いんだ」としばしば聞かれてしまうのです。

*1 資本を「人的資本」「組織資本」「社会関係資本」の3つに分けて考える。人的資本は個人のスキルや知識を意味し、組織資本は部門などの組織に蓄積した特許、技術、ノウハウなど。さらに、あの人を知っているからこんなことができる、といった関係を資本と捉えたのが社会関係資本。

 よく考えてみると、チーム内や部門内で結束力が高くても、外に対してはどうなのか。本来日本人は、その場の空気を読んで、いろいろな人の感情を考えながら行動できる。それをちょっと外に広げてみればいいのに、大変もったいないと思います。