「ライドシェア(相乗り)を配車アプリと表現するのは過小評価だ。AI(人工知能)を活用したプラットフォームを駆使し、未来の需要を予測している」――。ソフトバンク会長の孫正義氏がこう語るように、ライドシェア事業者の注目度が高まっている。「MaaS(Mobility as a Service)」時代のキープレーヤーだ。
中でも、中国を中心に5億5000万人もの登録ユーザーを抱える滴滴出行(Didi Chuxing)の存在感は大きい。2018年9月末に日本の大阪に進出するなど、世界市場への展開を加速させている。滴滴出行はなぜ強いのか。同社Vice President of Network and MarketplaceのXiaohu(Tiger) Qie氏に話を聞いた。
2012年6月の創業からわずか7年で、推定企業評価額は560億ドル(1ドル=113円換算で6兆3280億円)に達した。だが、「AIで配車」をうたうライバルは続々と登場している。滴滴出行は勝ち続けられるのか。
当社は世界最大級のモバイル交通プラットフォームで、1日当たりの乗車回数は3000万回に上る。そのプラットフォーム上で処理するデータ量は1日当たり4800Tバイトと膨大だ。毎日100Tバイト分の車両の走行軌跡(位置情報)データがクラウド上に新規に追加され、乗車の需要を予測したり最適ルートを検索したりするAIに磨きをかけている。
需要予測とは、どの場所のどの時間にどれくらいの移動のニーズがあるかを推定するものだ。利用者(乗客)からの配車リクエストとクルマの位置情報などのビッグデータから、機械学習に基づいてはじき出す。
どの乗車リクエストに対してどのクルマを向かわせるかを判断する「スマートスケジューリング」のアルゴリズムにもAIを使う。当社が確保しているクルマ(運転者)という“使える資源”を十分に活用し、必要な場所・時間に最適なクルマを用意する。これは、利用者と運転者の満足度を高めるだけでなく、都市の渋滞の解消も手助けできる。
予測で難しいのは、需要(乗客)側も供給(車両)側も常に動いている点だ。しかも、道路状況は刻一刻と変化する。こうした課題を解決すべく、この数年間、AIシステムの研究開発を強化してを鍛えてきた。その結果、2017年末の段階で、各地域について15分後の需要を85%の精度で予測できるようになった。