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必要な投資は実行、技術は守る

半導体産業の歴史を振り返ると、DRAMもフラッシュメモリーも当初は日本が世界一だったが、韓国メーカーなどの海外メーカーに逆転されてきた。こうした歴史を繰り返さないために大切なことは何か。

清水氏 CMOSイメージセンサーも半導体なので設備投資が必要だ。ソニーグループとして本社などからの資金面での支援も受けながら、必要な投資を実行していく。本来ならば半導体事業として我々自身がお金を生み出し回転させていかないといけないが、ある程度事業が成長するまでの間や、どうしても短期間に資金を準備しないといけない時期もある。本社などから支援を受けられる我々は、恵まれた環境にある。

 我々が幸いなのはCMOSイメージセンサーをピクセルとロジックの積層構造にしたことである。ロジックは製造委託しており、投資が必要なのはピクセルウエハーの生産能力分である。それでも自社工場は月産13万枚を超える規模になる。これに加えてロジックの生産能力分にも自社で投資しなければならないとしたら、なかなか難しいと思う。

 それから、ノウハウを含めて技術をしっかりと守っていかないといけない。

(撮影:加藤 康)
(撮影:加藤 康)

例えば、どういうことか。

清水氏 技術が漏洩しないようにすることだ。そのためには、人材の引き抜きに気をつけないといけない。

 従業員はとにかく大切にしている。特に技術者はとがった人、優秀な人が多い。例えば研究開発では、AさんとBさんのアイデアのどちらかを選ぶ場面が出てくる。Aさんのアイデアを選んだ場合、当然Bさんのモチベーションは少し落ちる。Bさんのような技術者をきちんとケアしないといけない。技術者にはとがった人が多いので、Bさんが上司と対立し、不満をためて、けんかして会社を辞めてしまうかもしれない。これはよくない。

 今、ものすごく気を付けていることである。Bさんもソニーに入って、ソニーが好きで仕事をしているわけだ。それが、人間関係の悪化によって辞めてしまうのでは、何にもならない。組織をうまくまとめてほしいと、部下にもしつこく言っている。

アイデアが採用されなかったBさんのモチベーションは、どうやって引き上げるのか。

清水氏 例えば、次のテーマを与える。やるべきことは1つだけではなく、たくさんある。

 「Cさんはどうしてもこのテーマから外せない。そのために、Cさんは他の新しいテーマをやりたいのだけれど、これまでと同じテーマをやり続けなければならない」という環境はできる限りなくす。様々な経験を積みたい人には経験させないといけないし、1つのテーマに深く取り組みたい人には深くやってもらう。技術者も一人ひとり考え方は違うので、個性を生かし、考え方を尊重して、組織をマネジメントする。これを今、徹底している。

技術漏洩という意味では、フラッシュメモリーではユーザーからセカンドソースを求められた東芝が韓国サムスン電子に技術供与したことが、シェア逆転を招く結果になった。CMOSイメージセンサーも将来、もっと製品が増えてきたときに技術ライセンスを供与することがあるのではないか。

清水氏 「技術ライセンスを供与したり研究開発を一緒に行ったりする一方、市場では競争する」という戦略はよく言われるが、これで生き残るのはなかなか難しい。我々にも、ユーザーから2社購買できるように技術ライセンス供与を促された時期があった。しかし、「それはできない」と説明した。

 一方で、我々の供給責任については結果を出し、また我々の技術の優位性を認めてもらえるように、ユーザーに対しては誠実に対応と説明を続けた。そうして、納得と信頼を得てきている。

ところで、少し前に、米国の有力アクティビスト(物言う株主)のサード・ポイントがソニーに対して「半導体部門を切り離せ」と要求した。清水さんは反対の立場だと思うが、ソニー本体が半導体センサーを持ち続ける意義や必要性についてどう考えているか。

清水氏 ソニーには様々な商品があるが、新領域にも進出すると言っている。その1つに例えばロボティクスがある。そこでは必ず新しいセンサーが必要になる。このようなシナジーはすごくある。かつてのデジタルカメラもそうだが、そのような顧客が社内にあるというのは、とても重要なことだ。