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 需要が爆発的に増え続けている先端半導体の代表例がスマートフォン(スマホ)用のイメージセンサーだ。2眼から3眼、さらに4眼へと、スマホ1台当たりのカメラ搭載数は増え続けている。この市場で50%の世界シェアを握っているのがソニーだ。今では、同社の重要な収益源の1つになっている。イメージセンサーを中心とする同社のイメージング&センシング・ソリューション事業のトップである清水照士氏に、同事業の戦略を聞いた。(聞き手は大石基之、田中直樹=日経 xTECH、所属はインタビュー当時)

CMOSイメージセンサーの工場投資は今後も国内か。それとも海外に出すのか。

ソニー 常務 イメージング&センシング・ソリューション事業担当の清水照士氏
ソニー 常務 イメージング&センシング・ソリューション事業担当の清水照士氏
(撮影:加藤 康)

清水氏 生産拠点として熊本、長崎、山形、大分の4拠点が現在ある。新たに生産拠点を作ることは考えていない。新拠点を作るとなると、工場インフラを整備しなければならないし、生産拠点が分散してしまい効率が悪くなる。既存の拠点は土地の制約もあまりなく、生産能力拡張のポテンシャルはある。

 我々のCMOSイメージセンサーは、画像の取り込みを担うピクセルチップと信号処理を担うロジックチップを積んだ積層方式を採用している。

 ピクセルウエハーは今のところ、自社工場で量産するのが基本の考えだ。ピクセルウエハーは様々なノウハウの塊だから、できる限り海外には出さない。海外に出す場合には、セキュリティーをコントロールできる環境の整備が必要である。一方、ロジックウエハーは現在もすべて社外のファウンドリー企業に製造を委託している。ロジックウエハーにはノウハウはそれほど詰まっていない。

 ピクセルウエハーの次の投資は、発表した通り長崎工場で実施する。生産能力を2021年3月までに300mmウエハー換算で月産13万8000枚まで引き上げる。さらに同工場内に新棟を建設し、21年4月の量産開始を目指す。そこで生産ラインを次々に立ち上げて、生産能力を増やしていく。長崎工場はこれで土地をフルに使うことになるが、他の工場については土地の制約はあまりなく、生産能力拡張のポテンシャルは十分にある。

ピクセルウエハーの製造は外に出さずに内製を基本にするというが、今後もそうあり続けるのか。

清水氏 あくまで基本であり、今後どうなるか分からない。世界の状況、他の供給メーカーの状況によって考えながら決めていくべきだと考えている。CMOSイメージセンサーの需要が中長期的にかなり増えていくという予測もある。我々のキャッシュポジション(手元流動性。投資に回していないお金)も十分考えながら、検討を進めていく必要がある。

仮に海外に出す場合、海外に自社工場を作ることも、海外のファウンドリーに製造委託することも選択肢になるということか。

清水氏 (どの選択肢も)ゼロではない。

(撮影:加藤 康)
(撮影:加藤 康)

スマホのセンサー市場は伸び続ける

CMOSイメージセンサー市場の中心はスマートフォン(スマホ)だ。スマホは成熟化してきていると言われるが、スマホ用のイメージセンサー市場は今後も伸びるという認識か。

清水氏 伸びる。まずスマホ1台当たりのカメラの搭載数が増える。例えば片面に4個、反対側は3個使うというようになる。もう1つ、カメラの性能を高めるために、イメージセンサーの面積が大きくなる。この結果、センサー1個当たりのシリコン(Si)ウエハー使用面積が増える。従って、工場投資は今後も必要だ。

スマホ以外の用途はどうか。特に期待する市場はどこか。

清水氏 今はまだスマホ以外の市場規模は小さい。現在のスマホ向けの売上高比率は8割強で、5年後でも7割がスマホ向けだとみている。10年先の2030年を考えると、インダストリアルと自動車の領域がだいぶ増えてくるだろう。

インダストリアル領域とは。

清水氏 例えばファクトリーオートメーション(FA)や監視カメラの用途だ。FA領域では、生産性向上のために正確な測定や検査が求められており、高速・高精度に認識できるイメージセンサーへの要求が増えてくる。より画素数の多い、解像度の高いイメージセンサーの需要が増える。

 監視カメラ向けでの要求も高解像度化という点ではFAと同じだが、同時に小型化と、暗いところでもハッキリと人が認識できるための高感度化を、両立させなければならない。技術的には、FA向けよりも難しい。

自動車向けはどうか。顧客からの要求が厳しく、難しい事業だと思うが、手応えは。

清水氏 2014年に開発を始めて、2017年末から顧客に本格的に採用され始めたばかりだが、手応えはある。

 最初は「いいものを出せば採用してくれるだろう」と考えていた。我々のイメージセンサーは一眼レフカメラなどで培った技術があり、ダイナミックレンジは圧倒的に高いし、暗いところでもよく認識できるほど感度も高いという自負もあった。

 ただ、採用が決まってからそれなりの数量のビジネスに達するまでに2~3年かかる。長い期間をかけて、しっかりと評価される。

 一方、海外の電気自動車(EV)メーカーには、評価にそれほど時間をかけない顧客もある。いわゆる「エレクトロニクスグレード」で良いとされる。その代わり、こうした顧客はキーパーツをうまく管理して、全部見えるようにする。そうすることで安全性を担保している。

海外の顧客も重視する必要が出てきそうだが、どうか。

(撮影:加藤 康)
(撮影:加藤 康)

清水氏 我々は世界中のすべての顧客にコンタクトを取り、我々のセンサーの良さをまず知ってもらうことが重要だと考えている。自動車用イメージセンサーに取り組み始めた4~5年前は「本気なんですよね、清水さん」とよく言われたが、本気度ももう伝わったと思う。

 ただ、時間がかかったりすることはある。それぞれの国や企業の文化をよく理解した上でビジネスを進めるべきだと常に考えながら取り組んでいる。

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