固定価格買取制度(FIT)の開始で再生可能エネルギーが伸びるなか、地熱発電だけが取り残されるように停滞している。国の掲げた2030年のエネルギーミックス(あるべき電源構成)における地熱の目標である150万kW(1.5GW)の達成が危ぶまれるなか、今年に入り国内では23年ぶりとなる大規模地熱(山葵沢地熱・4万6199kW)が新規に稼働した。国内の地熱開発の課題と可能性に関して、元日本地熱学会会長で地熱情報研究所代表の江原幸雄・九州大学名誉教授に聞いた。
「ミックス目標の達成は難しい」
2030年のエネルギーミックス(あるべき電源構成)で地熱発電に期待されている150万kWの目標達成をどのように見ていますか
江原 「2030年に累積150万kW」を達成するには、FIT開始前に稼働していた約50万kWに加え、新規で約100万kWを増やす必要があります。しかし、FIT開始後の導入量は小規模主体に41件・7万4600kWに過ぎず、「100万kW増」には程遠い状況です。
とはいえ、現在、日本各地の約100地点で地熱資源の調査・開発が行われており、来年以降には、「山葵沢地熱」に続き、複数の大規模地熱が相次いで運転を始める見込みです。ただ、現在、調査・開発中の案件の多くがうまくいったとしても、「100万kW増」の達成は不透明です。現実的には、目標達成はかなり難しいと思わざるを得ません。
そもそも「2030年に150万kW」という目標は、どのように決まったのでしょうか。
江原 国内における地熱発電の導入ポテンシャルは、約2000万kWに達すると試算されています。九州の九重町に集積する地熱発電などの実績から、1つの火山で20万kW程度の地熱資源があると考えられています。国内には約100カ所の火山があるので、合計すると、2000万kWのポテンシャルになります。
目標とした「150万kW」は、FIT開始前から3倍増で、国の電力需要の約1%を担う規模です。東日本大震災の後に経済産業省が主催した有識者会議(地熱発電の推進に関する研究会)では、150万kW達成のロードマップを作成しました。このシナリオでは、FIT前から調査・開発中のプロジェクトに加え、新規の大規模地熱(3万kW)を約20地点で調査・開発し、稼働に至るというイメージです(図1)。