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 日本最大の発電事業者JERA(東京都中央区)が、東京電力エナジーパートナー(東電EP)とのPPA(電力購入契約)の見直しに踏み切った。さらに限界費用によるJEPX(日本卸電力取引所)入札価格の算定方法の見直しも公表した。なぜ見直しを決めたのか。JERA最適化本部・最適化戦略部の野口高史部長に聞いた(インタビューは11月24日に行った)。

JERA最適化本部・最適化戦略部の野口高史部長
JERA最適化本部・最適化戦略部の野口高史部長

電力・ガス取引監視等委員会が10月1日に開催した会合でJERAと東電EPのPPAを一部改訂すると公表しました(「東京エリアにおけるグロス・ビディングの取扱いについて」参照)。長年続いてきた大手電力の発電部門と小売部門の関係性を見直す大きな変更だと感じました。なぜ、変更を決めたのですか。

関連情報: 東京エリアにおけるグロス・ビディングの取扱いについて

野口氏 2020年度冬季の需給ひっ迫と市場高騰の反省から、当社と東電EPのPPAの見直しが必要だと考えるようになりました。

 発電・送配電・小売りが垂直統合型だった時代は、社内コミュニケーションの中で需給バランスを取ってきました。ですが、東電グループと中部電力の燃料・発電部門を分社化してJERAを設立してからは、発電部門と小売部門は別会社となり、勤務場所も変わりました。

 契約で結びついている関係の中で、需給バランスをどう維持するのか。課題が浮き彫りになったと感じています。

具体的には、どのような課題が浮かび上がってきたのですか。

野口氏 需給ひっ迫を回避するためにはLNGの適正な調達が欠かせません。ですが、東電EPとのPPAには、燃料調達の判断を難しくする点が大きく3点ありました。

 第1に、東京エリアは自由化の進展によって、東電EPから新電力への離脱が進み、エリア全体の需要と東電EPの需要の差が大きくなっています。東電EPから離脱した需要は3割に迫ろうとしており、需要の動向を予測するのが難しい状況にあります。

 当社は東京エリア最大の発電事業者ですから、エリア全体の需給のしわ取りを期待されています。ですが、東京エリアには、ガス会社の火力発電所や共同火力など、様々な電源があり、当社の電源比率はエリアの5~6割にとどまります。これだけ不確定要素が多い中で、需給バランスを取るのが難しくなっていました。

東電EPとの変動数量契約がLNG調達のネックに

 第2が、東電EPとのPPAが、ゲートクローズ(実需給の1時間前)直前まで東電EPが当社から調達する電力量を変更できる「変動数量契約」となっていたことです。東電EPはギリギリまで自社需要に供給量を合わせるべく、当社に対して供給量の通告変更が可能でした。

 東電EPへの供給量がゲートクローズ直前まで変動するため、適正量のLNGを調達するのが難しくなっていたのです。

 LNG調達のリードタイムは2~3カ月。それ以降に追加でLNGが必要という話になっても、もはや追加での調達は間に合いません。国内に確保済みのLNGでやりくりするしかないのです。

 第3が、電力市場との接点を東電EPが持っていたことです。JEPXへの余剰電力の玉出しも東電EPが手がけていました。本来であれば燃料市場やLNG在庫運用に知見のある当社が実施すべきでしたが、慣例的に小売部門が担ってきたのです(編集部注:中部エリアはかねてJERAが玉出しを実施)。