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テストエンジニアに必要な2つの能力

 続いて、優秀なテストエンジニアになるために必要な能力を考えてみよう。活躍するテストエンジニアは共通して「批判的姿勢」を持ち、「コミュニケーション能力」が高いと筆者は感じている。

テストエンジニアに必要な2つの能力
テストエンジニアに必要な2つの能力
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 1つめの批判的姿勢とは、物事を常に疑って捉える姿勢だ。いかなるときもおかしなところがないか、隅々まで徹底して調べてみようとする。こうした姿勢は、積極的に課題解決を試みようとする優秀な開発者の姿勢とは対照的だ。

 システム開発を「ホームページ制作コンテスト」と捉えると理解しやすいかもしれない。参加者が開発者、審査員がテストエンジニアという関係になる。作品作りに挑む参加者はテーマの設定、類似のホームページの調査、デザインや文言の検討、機能の実装といった取り組みで締め切りまで最善を尽くす。積極的に課題解決を試みる姿勢がないと、最後まで力を出し切るのは難しいだろう。

 一方で、審査員は社会的に適切なテーマか、文言に間違いがないか、使い手のことを考えた機能やデザインか、バグがないかと応募された作品に疑いを持って問題ないかを確認する。正確かつ客観的な視点を持ち、常に物事に疑いを持つといった批判的姿勢がないようでは審査員失格だろう。

 テストの実務もこれと同様だ。開発者が一生懸命作った思い入れのあるソフトウエアに対し、一歩引いて客観的に常に疑いを持ちながら不具合や仕様と異なる点、正常な利用を妨げる動作がないかなどを確認する。ここで必要なのは批判的姿勢だ。

開発者を怒らせるテストエンジニアは二流

 2つめのコミュニケーション能力が欠かせないのは、テストは様々な関係者とのやり取りがあるからだ。正確に情報を伝達し、受け取る能力がないと、相手に無駄な作業をさせてしまったり、何度も内容確認が必要になってしまったりする。これは生産性の低下に直結する。

 テストエンジニアに必要なコミュニケーション能力をもう少し深く考えると、「事実を伝える能力」と「相手を意識して伝える能力」の2種類に分解できる。

 事実を伝える能力とは、状況を正確に把握し、事実を簡潔で明確に表現した文書にして、相手に正確に伝える能力のことだ。通常、テストでは実行した結果を「インシデントレポート」と呼ばれる文書にまとめる。これを使って、発見したバグや、バグとは断定できないがリスクとなる事実を報告する。ときどき、前提となる状況の記述がなかったり、事実ではなく自分の主観を長々と書いてあったりする場合がある。これでは、読み手に正確な情報が伝わらない。

 相手を意識して伝える能力とは、相手が必要としている情報を的確に伝えることだ。例えば、開発者は問題を見つけ出して修正するための情報を必要としている。テストリーダーやプロジェクトマネジャーは、リソースの割り当てに必要な情報を探している。両者にとって必要な情報を過不足なく伝えるには、得られた情報を整理して、伝えるべき相手にとって必要十分な情報であるかどうかを判断できる能力が必要だ。

 さらに、相手の気持ちへの配慮も大切だ。開発者は自信を持って成果物を作成しており、自分の仕事が「間違っている」と他人から指摘されるのは気分の良いものではない。特に時間の余裕がなかったり、ほかの重要課題に取り掛かっていたりすると、ちょっとしたことで感情的なトラブルになりかねない。

 こうしたとき、「担当者を非難するのではなく、事実に焦点を当てて客観的に話す」「後工程の担当者や顧客に迷惑をかけずに済んだなど、問題発見のポジティブな点を強調する」「問題解決に自らも協力する姿勢を明確にする」といった配慮をしながら相手に伝える能力が求められる。

近藤 康二(こんどう こうじ)
SHIFT コーポレートデベロップメント本部 人事部 人事企画グループ (兼) ビジネストランスフォーメーション事業本部 サービスプロモーション部 ヒンシツ大学室
大手電機メーカーに30年以上在籍して、組み込み機器や大規模システムのソフトウエア開発を担当。全社ソフトウエアプロセス改善の牽引役やオフショアを活用した大規模検証プロジェクトのマネジメントなども担当。2013年5月にSHIFT入社。現在は、人事部に所属してキャリアアドバイザーとして年間250人以上の社員とキャリア面談を担当する傍ら、テスト技術に関する講演や研修コース開発と講師を担当。日本SPIコンソーシアム 外部理事、ASTERテストプロセス改善分科会 SWG所属。