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 日本航空(JAL)100%出資の中長距離の格安航空会社(LCC)であるZIPAIR Tokyo(ジップエアトーキョー、ブランド名はZIPAIR)が2020年5月の営業運航開始に向け準備を着々と進めている。

 2019年12月18日には同社が使用するボーイング787型機の客室を報道関係者に公開。LCCでは珍しいフルフラットの座席や温水洗浄便座を搭載したほか、JALの国際線で使用している同型機より100席前後多い290席としつつ各席へのディスプレー搭載をやめて総重量を0.5トン削減するなど、メリハリが付いた投資で独自性を打ち出している。

ZIPAIRのボーイング787型機の機内。LCCでは異例となるフルフラットの座席も用意している
ZIPAIRのボーイング787型機の機内。LCCでは異例となるフルフラットの座席も用意している
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 そんななか記者が注目したのは、ZIPAIRのデジタル活用に対する考え方だ。同社の西田真吾社長は「これまでの航空会社のやり方、使っていたものを踏襲せず、1から考えてよいという状況で事業を始められた。デジタル、ITの力を最大限使っていきたい」と語り、これまでのLCCよりもさらに徹底したデジタル活用で技術革新を進めていく姿勢を示した。例として西田社長は、法人営業部門を持たずWebによるデジタルマーケティングに注力すること、社内文書や航空券、搭乗券などの紙を全廃すること、空港における手荷物の預け入れなどにセルフ機を活用し省人化を図ること、などを挙げている。

JALに対しDXで「カエル跳び」できるか

 一般に、後発企業がイノベーションで先発企業を追い抜くことを「リープフロッグ(カエル跳び)現象」と呼ぶ。西田社長をはじめとするZIPAIRの経営にとって、リープフロッグの相手として想定するのは、まずはライバルのANAホールディングス(ANAHD)傘下のPeach Aviation(ピーチ)や他の国内外のLCC、そして全日本空輸(ANA)を始めとする大手航空会社だろう。ただ記者は、JALグループ全体の経営という観点では、むしろZIPAIRに期待されているのは、親会社のJALに対するリープフロッグではないかと考えている。

 JALは10年前の2010年1月19日に会社更生法適用を申請し経営破綻した。その後、京セラ創業者の稲盛和夫氏が会長に就任し、同社の「アメーバ経営」に基づく部門別採算制度やフィロソフィ経営を徹底するなどして、2年7カ月後の2012年9月19日に再上場を果たした。以降、一時は営業利益率15%に達するなど世界の航空業界でも屈指の高収益企業となったことは周知の事実だ。