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 「お前らのせいで面接落ちた。どうしてくれるんだ」

 怒りの電話が掛かってきたのは、2021年10月上旬のことだった。受けたのは、ある“部屋”を管理する会社のコールセンターだ。

 「リズムが崩れてうまくパフォーマンスできなかった」

 どういうことか。興奮を収めて話を整理すると、全体像が見えてきた。

 クレーム電話の主(以下、A氏)は、転職面接で不合格になってしまったという。そして、その面接を受けた場所が、時間単位で利用できる個室型のワークスペースだった。面接の時間に合わせて予約した都内の1室に向かうと、そこには前の利用者(B氏)がいた(図1)。時間貸しのスペースなので、自分の予約時間まで待つことにした。

図1 個室型のワークスペースの例
図1 個室型のワークスペースの例
(撮影:日経クロステック)
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 問題が起こったのはここから。A氏の利用時間になっても、B氏が部屋から出てこなかったのである。

 部屋の扉をノックするA氏。それでも先客のB氏は出てこない。面接の約束時間が迫るA氏は仕方なくコールセンターに連絡。その電話を受けたコールセンターの担当者がB氏に連絡し、部屋から退出してもらった。どうやら、オンラインでの商談に必死で、利用時間が終わっていることに気付かなかったらしい。

 ようやく個室を確保したA氏は急いでオンライン面接の準備を進め、何とか約束の時間に間に合った。だが、心の準備まではできなかったようだ。はたしてA氏は、冒頭のように怒りの連絡をコールセンターに入れたのであった。

 クレームを受けたのは、個室型ワークスペース「RemoteworkBOX」を展開する2Linksである。2021年3月に同事業を開始し、新宿駅南口から徒歩1分のビルの一角に最初のRemoteworkBOXを設置した。その後、東京23区内を中心にサービスを展開し、21年12月には設置台数が100台を超えた。

低価格で大手と差異化

 新型コロナウイルス感染症のまん延を機に街中で見かけるようになった個室型のワークスペース。JR東日本が運営する「STATION BOOTH」や富士フイルムグループの「CocoDesk」など大手企業も力を入れる新市場だ。

 2Linksは後発で、「安価にサービスを提供する」(2Links代表取締役の森岡真生氏)ことで大手との差異化を図る。実際、RemoteworkBOXの利用料金は1時間あたり500円前後で、STATION BOOTHやCocoDeskの半額ほどと安い。ワークスペースの製造原価を抑え、設置場所も賃料を優先して選んだ。

 そんな中で出くわした冒頭のクレーム。対策方法はいくつか考えられる。ブース内にカメラを置いて遠隔で監視したり、利用時間が終了したら自動で解錠するようなドアを設置したり……。だが、2Linksはこうした方法を選択しなかった。