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 2021年1月12日、全国スーパーマーケット協会が主催する「お弁当・お惣菜大賞2021」の結果が発表された。スーパーマーケットやコンビニエンスストア、専門店などの店頭で実際に販売されている弁当や総菜、サラダ、パンなどの中から優れたものを11の部門ごとに食の専門家が選ぶ。10回目となる今回の応募総数は4万2549件だった。

 丼部門で4408件の応募商品から最優秀賞に選ばれたのは静岡県掛川市の地場スーパー、三善の「掛西フレッシュ丼」。地元のブランド豚肉「かけがわフレッシュポーク」の天ぷら丼だ。「掛川牛」のローストビーフを使った同社の「『華の17歳』バラちらし寿し」も寿司部門で入選した。新型コロナ禍で式典やイベントが激減し、需要の落ち込みに苦しむ地元のバラ農家に対する応援の気持ちを込めて、ローストビーフはバラの形に盛り付けた。

2020年9月、三善の店頭で「『華の17歳』バラちらし寿し」などを販売する掛川西高校食物研究部の生徒
2020年9月、三善の店頭で「『華の17歳』バラちらし寿し」などを販売する掛川西高校食物研究部の生徒
(出所:静岡県立掛川西高校)
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 2品とも静岡県立掛川西高校食物研究部と同社が共同で開発したものだ。この共同開発プロジェクトは2020年の「お弁当・お惣菜大賞2020」でも、掛川牛や深蒸し茶といった特産品を取り入れた「静岡丼」で丼部門の最優秀賞を獲得し、掛川牛ローストビーフやかけがわフレッシュポーク、みかん酢などを使った「しぞ~か寿司」が寿司部門で入選を果たした。

 「お弁当・お惣菜大賞」にはイトーヨーカ堂やライフコーポレーション、成城石井などといった大手企業も応募している。高校生の部活動が大手スーパーのプロと競い合えるような商品開発力を発揮しているとは驚きだ。掛川西高校は話題作りのために名前を貸しているだけで、実質的には三善の担当者がすべて開発しているのではないだろうか。そんな意地悪な疑問もわいてくる。

「起業の夢に一歩近づけた」

 教育現場のデジタル変革(DX)をテーマに特集を担当していた私は2020年11月、掛川西高校を取材するため訪れた。放課後に食物研究部の活動を見せてもらった。

 「商品開発にはコンセプト、ターゲット、デザイン、内容(原材料・味)、価格(原価・売価)、販売方法・販売場所、広報・情報発信という7つの視点が必要です」。教壇に設置されたノートパソコンから高知県在住のコンサルタント、東森歩氏がオンライン会議システムを通じて生徒たちに語りかける。東森氏は三善のコンサルタントも務めている。

 食物研究部に所属する部員は約50人。ほとんどが女子生徒だ。この日は掛川市の特産品を使った土産物の商品開発会議が開かれていた。会議には三善の川合利弘社長と商品開発の担当者2人も同席し、静岡土産として人気の蒸しケーキ「こっこ」などを部員に配った。東森氏が挙げた7つの視点を考慮しながらそれらがなぜヒットしているのかを部員たちがグループに分かれて議論し始めた。

 各自の机には掛川のお茶やミカン、イチゴを使ったまんじゅうやクッキーといった各部員のアイデアが書かれた紙も置かれていた。マーケティング理論を踏まえた本格的な商品開発をしているわけだ。「高校生だからといってレベルを落としたりはしない。大人が対等に接することが成長を促すと思っている」と三善の川合社長は話す。三善は地域の子どもたちに仕事体験を提供するなど、地域に密着した活動に熱心な企業だ。

静岡の人気菓子「こっこ」などを題材にヒット商品の分析をする
静岡の人気菓子「こっこ」などを題材にヒット商品の分析をする
(出所:日経クロステック)
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