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 最近、全国に設置されている大量の太陽光パネルが寿命を迎えた場合の対処問題に対する懸念を多く聞くようになってきた。処理能力を超える量の廃棄パネルが出てくるのではないか、発電性能が落ちたメガソーラーを業者が放置、あるいは不法投棄して逃げてしまうのではないか、太陽光パネルに有毒物質が含まれていて環境を汚染するのではないかといった懸念である。つい数日前にも、NHKが「ビジネス特集 太陽光パネル“大廃棄時代”がやってくる」という番組を放映した。

 こうした懸念に対して、筆者の知る限りではあるが、太陽光発電事業者の多くは真剣に向き合おうとしている。「太陽光パネルの墓場のようなものをつくってはならない」が、真面目な事業者の間では共通認識になっている。太陽光発電に対する悪い印象が広がれば、事業の長期的な継続が難しくなることを理解しているからだ。

 ただし、自然の山林を伐採して治水や土砂の流出対策もほとんど施さずに、パネルを設置するような事業者が存在するのも残念ながら事実。そうした事業者がきちんと“後片付け”をすることを期待するのは無理なのも確かだろう。山林を伐採するケースでは、たとえパネルを撤去しても、それだけでは現状復帰にはならない。

 筆者としてはそういう事業者の参入は最初から制度設計で防ぐべきだったと考える。例えば、自動車の運転免許証のような制度を設けて、何か違反をすれば減点し、点数に応じて固定価格買取制度(FIT)の適用年数を減らす、などの工夫はいくらでもできたはずだ。

 遅まきながら、資源エネルギー庁は、廃棄パネルの処理については、事業者に廃棄費用確保のための積立金を義務付ける制度を2022年7月1日に施行する。この制度ではFITの認定取り消しもできるようになる。

 大量の廃棄パネルが出てくるのは現行のFITが始まった2012年から約20年後、つまり2032年以降になるはずなので、今のうちに積立てを義務化しておけば、問題の深刻化は防げそうだ。

パネルのガラスを割らずに分離して再利用可能に

 パネルの大量廃棄問題には、業者が技術で対応する可能性も出てきた。例えば、産業廃棄を手掛ける浜田(大阪府高槻市)は、太陽光パネルの一部を再資源化する技術を開発し、既に実用化した(図1)。

図1 展示会で太陽光パネルのリサイクル技術を出展した浜田のブース
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図1 展示会で太陽光パネルのリサイクル技術を出展した浜田のブース
(出所:日経クロステック)

 具体的には、パネルの太陽電池セルを覆っているカバーガラスや裏面の樹脂のシート(バックシート)を、EVA(エチレン酢酸ビニル共重合樹脂)で封止されたセル(セルシート)から分離する(図2図3)。この技術が、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の支援の下でエヌ・ピー・シー(NPC)や浜田が開発した「ホットナイフ分離法」だ。これによって、パネルのコストの大きな割合を占める板ガラスを割らずに回収でき、ガラス原料として再利用できるようになる。

図2 浜田の「ホットナイフ分離法」の概要
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図2 浜田の「ホットナイフ分離法」の概要
(出所:浜田)
図3 ホットナイフ分離法で分離したバックシートとセルシートの様子
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図3 ホットナイフ分離法で分離したバックシートとセルシートの様子
(出所:日経クロステック)

 また、セルシートはEVAごと破砕することで、配線に使われていた銅(Cu)や銀(Ag)などのレアメタル材料を取り出せるようになるという(図4)。

図4 浜田が破砕したセルの例
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図4 浜田が破砕したセルの例
(出所:日経クロステック)

 セルの成分の大半を占めるシリコン(Si)の再利用は難しいというが、Siはもともと身近な“砂”の主成分で、環境を大きく汚す心配はない。

 このリサイクル技術で、パネルの付加価値が高い部材を回収、再資源化できるようになったわけだ。廃棄するパネルに価値が出てくるなら、放置や不法投棄も大幅に抑制できるはずである。

 既に浜田は2021年7月に太陽光パネルのリユースやリサイクル事業の認可を取得し、同年8月には京都府八幡市でリサイクル工場を稼働させた。