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 2022年の年明け、久々にクルマで外出する機会があり東京都内を走行した際、たまたま写真のような案内板を見かけた。東京近郊のあちこちでよく見かける首都高速道路(首都高)の入り口案内板だが、一部が緑色のシールで覆われている。すぐ隣には、全面が覆われているものの縁の紫色だけがわずかに見える案内板もある。

 「これはもしや……」と思って検索したところ、すぐに調べがついた。首都高は2021年12月、既存の料金所を順次ETC専用にしていく計画を発表していた。首都高に181カ所ある既存の料金所(ETC専用に非対応)のうち、まず2022年3月1日に5カ所、同年4月1日には29カ所をETC専用とする。さらに2025年度には全料金所の約9割にあたる約160カ所、2030年度には全料金所をETC専用にする方針という。

 ETC専用化への詳細な計画を知るにつれ、これはデジタル変革(DX)に関して大きな示唆があると記者はみている。

一部分をシールで目隠ししてある首都高の入り口案内板(右)。隠されたところには「ETC専用」の文字が書かれているようだ。左側の全面が覆われた看板も、わずかに見える紫色からしてETCレーンに関する案内と思われる
一部分をシールで目隠ししてある首都高の入り口案内板(右)。隠されたところには「ETC専用」の文字が書かれているようだ。左側の全面が覆われた看板も、わずかに見える紫色からしてETCレーンに関する案内と思われる
(撮影:日経クロステック)
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ETC利用率は既に約97%、新型コロナ禍で一挙に加速

 首都高では2000年にETCの試行サービス、2001年に一般向けサービスを始めた。ETC利用率は順調に伸び、2012年に90%、2017年には95%を超えている(直近の2021年11月は96.8%)。このころから首都高ではETC専用化を検討していたといい、国土交通省の社会資本整備審議会などでも同様の意見が上がるようになっていた。

 そうしたETC専用化の動きがここにきて一気に進み出したきっかけは、2020年春からの新型コロナウイルス禍だ。料金所の一般レーンに勤務する収受員が新型コロナに感染して人員の確保ができなくなり、第1波による緊急事態宣言が発令されていた同年4~5月に3カ所の料金所を一時ETC限定として運用した。その結果、これらの料金所での誤進入率は0.64~2.25%にとどまり、大きな混乱なく運用できたのだ。同年2月に首都高で初のETC専用入り口として新設された横浜北線の馬場入り口でも、同年3~7月の平日平均で誤進入率が0.17%と低水準だった。

 関東地方南部の都県や政令指定都市の首長らで構成する九都県市首脳会議では同年5月、既に首都高のETC利用率が高まっていることなどを背景に、ETC利用率100%に向けて首都高のETC専用入り口の整備を促すことなどを決議。同年8月に赤羽一嘉国土交通相(当時)へ要望書を手渡している。

 相前後して社会資本整備審議会の国土幹線道路部会でも、同年7月に国交省の高速道路課長が新型コロナ禍に伴うETC限定運用の結果を説明。そのうえで「高速道路会社がしっかりと事業継続できる体制ということで(中略)きちんと料金収受ができるように、もうETC専用化にしてしまうというようなこともあるんだろうと思います」と話している。

 関係団体のヒアリングでもETC専用化に賛同する意見が相次ぎ、同年9月に出された同部会の中間報告で「ETC専用化等による料金所のキャッシュレス化・タッチレス化を強力に推進すべきである」と明記した。同年12月に国交省と首都高を含む高速道路会社6社が共同でETC専用化に向けたロードマップを発表し、「都市部は5年、地方部は10年程度での概成」を目指すと時間軸を明確にした。