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 先日、自宅をリフォームした。未曽有の資材高騰のさなかで、タイミングは決して良くないのだが、価格が落ち着くのをいつまでも待っているわけにもいかない。幸い、地元の建設会社に勤務している妻が自ら工事を手配し、コストを抑えてリフォームを終えることができた。

 リフォームのメインは、壁紙の張り替え。経験がある読者はお分かりかと思うが、壁紙の種類はとにかく多い。織物調に石目調、塗り壁調といった風合い、そして模様、色の組み合わせはそれこそ無数にある。上場大手のサンゲツやリリカラといったメーカーが有名だが、日本壁装協会に見本帳を掲載している企業だけで17社もある。

壁紙を張り替え中の筆者の自宅。写真は壁紙を張るための工具類。壁紙には無数の種類があり、見本帳はコロナ禍に流行した「鈍器本」(凶器になりそうなほど分厚い本)も真っ青の分厚さだ(写真:木村 駿)
壁紙を張り替え中の筆者の自宅。写真は壁紙を張るための工具類。壁紙には無数の種類があり、見本帳はコロナ禍に流行した「鈍器本」(凶器になりそうなほど分厚い本)も真っ青の分厚さだ(写真:木村 駿)
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 壁紙選びには、サンプルで色味や手触りなどを確認するプロセスが欠かせない。デジタルのカタログで見るのと、実物を目の当たりにするのでは、大きく印象が異なる場合があるからだ。筆者も妻とサンプルを見て、触りながら各部屋の壁紙を決めた。

 どれだけデジタル化が進んでも、最終的にはサンプルで実物を確認しなければ十分ではない――。これはフローリングやタイル、石材といった建材全般に共通する。建築士やインテリアデザイナーが、これまで使ったことのない建材を採用する際の検討材料として、あるいは顧客との打ち合わせ資料として、メーカーからサンプルを取り寄せる行為がなくなることはないだろう。

 必要不可欠なプロセスであるとはいえ、サンプルの取り寄せは面倒だし、できればやりたくない地味な仕事に違いない。各メーカーのウェブサイトに必要事項を入力したり、あるいは電話やFAXで申し込んだりするのは手間だ。届くタイミングがバラバラなのも困る。大量のサンプルを取り寄せた場合、梱包を解くだけで骨が折れるし、プロジェクトごとに分類し直さなければならない。不要になったサンプルを捨てるのにも労力がかかる。

 そんな「建材サンプル問題」を解決する米国発のサービスが日本に上陸し、2023年1月11日から実証事業を始めると聞き、千葉県市川市の物流センターに足を運んだ。サービス名は「Material Bank Japan」(マテリアルバンクジャパン)。DesignFuture Japan(デザインフューチャージャパン、東京・渋谷)が運営する。

中央の人物は、Material Bank Japanを運営するDesignFuture Japan(東京・渋谷)の中沢剛CEO(最高経営責任者)。デザイナーが注文したサンプルは、中沢CEOの前にある箱に収められて届く(写真:日経クロステック)
中央の人物は、Material Bank Japanを運営するDesignFuture Japan(東京・渋谷)の中沢剛CEO(最高経営責任者)。デザイナーが注文したサンプルは、中沢CEOの前にある箱に収められて届く(写真:日経クロステック)
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 マテリアルバンクジャパンは、多様なメーカーの建材を1つのウェブサイト上で横断的に検索し、複数の建材サンプルをまとめて取り寄せられるサービスだ。サンプルを物流拠点にストックしておき、デザイナーからの注文に応じて専用トレーにパッキング。すぐさま配送する。午前0時までに注文すれば、最短で翌朝には受け取れるというから驚きだ。不要になったサンプルは、トレーに入れて同梱の着払い伝票で送り返せばいい。

 デザインフューチャージャパンの中沢剛CEO(最高経営責任者)はビジネスモデルについて、「デザイナーは無料で利用できる。メーカーにリード(見込み客の情報)を提供し、対価を頂く仕組みだ」と説明する。サンプルの取り寄せが発生した際に、メーカーが同社に費用を支払うイメージだ。メーカーが商品の情報をウェブサイトに掲載するのは無料。データベース化は、デザインフューチャージャパンがサポートしている。「デザイナーとメーカー、我々にとってウィンウィンウィンのモデルを実現できる」(中沢CEO)

Material Bank Japanのイメージ(出所:DesignFuture Japan)
Material Bank Japanのイメージ(出所:DesignFuture Japan)
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