全2780文字
PR

 ベンチャー企業の草分け的存在であるセコムの創業者で社長・会長を務めた飯田亮氏が2023年1月7日、その生涯を終えた。89歳だった。筆者は日経コンピュータ記者時代、2001年と2009年の2度、飯田氏にインタビューする機会に恵まれた。名経営者である飯田氏の発言は明快で学ぶことが多かった。飯田氏の訃報に触れ、同氏の発言をもう一度肝に銘じようと、過去のインタビュー記事を読み返してみた。

 飯田氏の発言は今でも色あせることはなく、デジタルトランスフォーメーション(DX)など変革に挑む読者の多くに役立つ――。こう確信し、飯田氏への感謝と哀悼の意を込めて、本記事を執筆させていただく。

セコム創業者の飯田亮氏
セコム創業者の飯田亮氏
1956年3月学習院大学政経学部経済学科卒業。同年、父の経営する酒類問屋の岡永に入社。1962年7月、日本初の警備保障会社、日本警備保障(現セコム)を設立し、代表取締役社長に就任。1966年6月、日本で初めてオンラインによる安全システム「SPアラーム」を開発。1976年2月から代表取締役会長。1981年1月、家庭用安全システムを国内で初めて発売。1997年6月から取締役最高顧問。2022年6月から創業者・顧問。(写真:菅野 勝男、2009年)
[画像のクリックで拡大表示]

リーダーは、せっかちで明るい性格が良い

 日経クロステックと日経BP 総合研究所 イノベーションICTラボによる調査報告書「DXサーベイ 2023-2025 674社の成功・失敗の実態と課題分析」によれば、「DX領域で採用・育成を強化すべき人材像はどれですか(複数回答可)」に対する回答で最も多かったのは、「変革リーダー(DXを主導するリーダー)」(60.8%)だった。

 DXで成果を上げられるかどうかは、優れたリーダーがいるかどうかにかかっているだけに、リーダーの選抜に悩む読者には、飯田氏の意見は参考になるだろう。

 リーダーは、せっかちで明るい性格が良い

 飯田氏の発言のなかでも、筆者がよく覚えているフレーズがこれである。「社長を選ぶ際の基準は何か」という質問への答えだ。リーダーというのは、失敗すれば責任を取る。成功してもまた次の策を考える。こうしたことの連続で、相当な胆力が必要になるだけに、根が明るくなければ務まらない、というわけだ。

 リーダークラスの人材が性格的に暗い場合に、パワハラみたいな問題が起きると思います。部下に対する愛情を持たない人間が、ネチネチと小言を言うからまずいわけです

 「コロナ禍でテレワーク中心になってから、マイクロマネジメント型リーダーが率いるチームのパフォーマンスが低下している」。ここ1~2年、こんな悩みを打ち明けるCIO(最高情報責任者)やCDO(最高デジタル責任者)が増えている。ネチネチを「マイクロマネジメント」と言い換えるとしたら、これまでとは違った観点でリーダーを選ぶべき企業・組織は少なくないのではないだろうか。