ベンチャー企業の草分け的存在であるセコムの創業者で社長・会長を務めた飯田亮氏が2023年1月7日、その生涯を終えた。89歳だった。筆者は日経コンピュータ記者時代、2001年と2009年の2度、飯田氏にインタビューする機会に恵まれた。名経営者である飯田氏の発言は明快で学ぶことが多かった。飯田氏の訃報に触れ、同氏の発言をもう一度肝に銘じようと、過去のインタビュー記事を読み返してみた。
飯田氏の発言は今でも色あせることはなく、デジタルトランスフォーメーション(DX)など変革に挑む読者の多くに役立つ――。こう確信し、飯田氏への感謝と哀悼の意を込めて、本記事を執筆させていただく。
リーダーは、せっかちで明るい性格が良い
日経クロステックと日経BP 総合研究所 イノベーションICTラボによる調査報告書「DXサーベイ 2023-2025 674社の成功・失敗の実態と課題分析」によれば、「DX領域で採用・育成を強化すべき人材像はどれですか(複数回答可)」に対する回答で最も多かったのは、「変革リーダー(DXを主導するリーダー)」(60.8%)だった。
DXで成果を上げられるかどうかは、優れたリーダーがいるかどうかにかかっているだけに、リーダーの選抜に悩む読者には、飯田氏の意見は参考になるだろう。
リーダーは、せっかちで明るい性格が良い
飯田氏の発言のなかでも、筆者がよく覚えているフレーズがこれである。「社長を選ぶ際の基準は何か」という質問への答えだ。リーダーというのは、失敗すれば責任を取る。成功してもまた次の策を考える。こうしたことの連続で、相当な胆力が必要になるだけに、根が明るくなければ務まらない、というわけだ。
リーダークラスの人材が性格的に暗い場合に、パワハラみたいな問題が起きると思います。部下に対する愛情を持たない人間が、ネチネチと小言を言うからまずいわけです
「コロナ禍でテレワーク中心になってから、マイクロマネジメント型リーダーが率いるチームのパフォーマンスが低下している」。ここ1~2年、こんな悩みを打ち明けるCIO(最高情報責任者)やCDO(最高デジタル責任者)が増えている。ネチネチを「マイクロマネジメント」と言い換えるとしたら、これまでとは違った観点でリーダーを選ぶべき企業・組織は少なくないのではないだろうか。