日本学術会議と、57学会が参加する防災学術連携体とが主催するシンポジウム「令和元年台風第19号に関する緊急報告会」が2019年12月24日、東京都内で開催された。学会間の情報交流を深め、今後の対策を総合的に検討するのが狙い。20を超える学会から専門家が登壇し、被害の調査や対策の検討について報告した。特に印象に残ったのが、流域の被害を分析した土木学会の報告だ。
台風19号では、国管理の7河川で12カ所、県管理の67河川で128カ所の堤防決壊があった。土木学会は代表的な被害の例をいくつか報告した。登壇した同学会の清水義彦氏は、「河道の実力がどれくらいあったのか、(洪水を安全に)流すことができたのかという観点で検証している」と説明した。
例えば、長野県の千曲川では、川幅が狭まる箇所で越水破堤が起こった。ここから氾濫した水の量を浸水深のマップから算出。仮に破堤がなかった場合、下流にどのような被害が及んだのかを検証しているという。
首都圏の荒川水系でも、埼玉県を流れる越辺(おっぺ)川や都幾(とき)川の合流点付近で起きた氾濫や、入間川の氾濫について分析。今後、こうした河道を改修すれば、氾濫した水を下流域で安全に受け止められるのかという課題を指摘した。
土木学会の発表は、想定を超える豪雨に対する手段として、流域のどこかに氾濫域を設けることで、流域全体の被害を抑えるという対策の可能性を示唆している。場合によっては、上流部に氾濫域を設けて、人口や産業が密集した下流域の市街地を守るという選択肢があるのかもしれない。土木学会は、こうした流域全体での危機管理と防災計画の必要性を訴えた。