新型コロナウイルス禍が始まって以降、出張でもそれ以外でも海外渡航の機会が皆無になっていたが、国内外の水際対策緩和を受けて2022年末に海外旅行に行ってきた。個人的にはほぼ3年ぶりの海外渡航で、コロナ禍以前との違いをあらゆるところで感じる旅行となった。特に多くのことを考えさせられたのは海外からの帰国時、日本に入国する際のCIQ(税関・出入国管理・検疫)手続きにおけるデジタル化だ。以前に比べれば大幅に進化しているものの、もう一歩踏み込んでほしい残念な点も見受けられた。
もともと日本の入国手続きのデジタル化は、政府が新型コロナ禍以前から進めていたものだ。訪日外国人数は2010年前後の800万人台から2019年には3100万人を超える規模まで急増。さらに2020年の東京五輪・パラリンピックによりさらなる増加が見込まれていた。そこで政府は受け入れ体制強化の一環として、それまで多くを人手に頼っていた入国手続きにデジタルを活用することにしたわけだ。
CIQの3つの手続きのうち、入国審査は新型コロナ禍以前の段階で主要空港において「顔認証ゲート」の運用を始めていた。税関は2019年に一部の空港・ターミナルで電子申告の運用を始め、翌2020年に国際線の主要空港へ導入しており、税関申告用のスマートフォンアプリやWebサイトで事前申告する仕組みとなっていた。
検疫を巡っては、新型コロナ禍の水際対策で一時、紙の陰性証明の提示を求めるなどしていた。これに対し、実際に入国手続きを経験した人たちなどから運用が非効率だと批判の声が多く出ていた。その後、健康観察用の「MySOS」アプリで検疫の事前手続きを可能にするなど段階的に運用を改善していた。
今回記者が入国した際は、検疫と税関のいずれもデジタル庁が運営する「Visit Japan Web」というWebサイトにおいて、日本行きの航空便に乗る前にスマートフォンから一括で事前手続き可能になっていた(外国人は入国の事前手続きも同サイトで可能。日本人は入国の事前手続き自体が不要)。
検疫手続きは、渡航者はVisit Japan Webでユーザー登録したうえで、新型コロナワクチンの接種証明または陰性証明の書類を、画像やPDFファイルでアップロードする。最初は赤色だった検疫確認の画面が、書類に問題がなければ登録後数時間ほどで青色に変わる。記者の場合は出発前夜に登録し、翌朝に再確認したところ青色に変わっていた。この画面をキャプチャーするなどしておき、日本到着時に検疫係官に示せばよい。
税関手続きは、紙の税関申告書と同様の内容をVisit Japan Webで入力する。入力が完了するとQRコードが表示される。日本入国時は、税関カウンター前にある「電子申告端末」でこのQRコードとパスポートの個人情報画面をスキャンし、併せて同端末で顔写真を撮影する。これを済ませると電子申告ゲートを通過可能になる。あとはスーツケースなどの荷物を受け取ったうえで電子申告ゲートを進んでいくと、顔認証によって自動でゲートが開く。