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 もし自分や家族が認知症になったらと不安になることがある。身の回りの世話はどうしようか。仕事は続けられるのか。お金はどのくらいかかるだろうか。幸運なことに私も家族も現在、認知症当事者ではないが、もしそうなるなら早めに発見したいと思う。

 日本IBMによると、AI(人工知能)による解析で、認知症についても様々なことが分かってきている。例えば、「同じことを何度も言う」。認知症の典型的な症状として思い浮かべる人は多いだろう。

 IBMは高齢者に電話での見守りサービスを手がける「こころみ」(東京都渋谷区)と協業し、こころみが所有する高齢者との電話での会話ログを匿名化し、音声を書き起こしたテキストをIBMのAI「Watson」で解析している。「1回の会話の中で同じことを繰り返し言うより」も、「異なる日の会話で同じことを繰り返し言う」ほうが認知症との相関が高いことが分かったという。特に7日間程度空けるとこの特徴が顕著に表れた。つまり、1週間前と同じことを繰り返し言うのは、認知症の疑いがあるので早めに病院に行くほうがよい。認知症を早期に発見するには、1回限りではなく継続的に見ることが重要だというわけだ。

 「人間が直感や暗黙知で『こうでないか』と思うことがAIによる解析結果でも正しいと証明されることがある。これはその典型」(日本IBM東京基礎研究所アクセシビリティ&ヘルスケア担当の高木啓伸シニア・マネージャー)。

描画で認知症を見分けるポイント

 描画は昔から認知症研究とは関わりが深い。アルツハイマー型認知症かどうかを調べるため、時計の絵を描いて空間認知や構成能力を調べる時計描画テストという手法もある。IBMが着目するのは絵そのものではなく筆圧だ。タブレット端末に絵を描いてもらうと、健康な人の筆圧は一定だが、認知症の前段階とされる軽度認知障害(MCI)の場合、筆圧にばらつきがあることが分かった。

 「完成した絵を見ているだけでは分からない。こちらはタブレット端末の発達というテクノロジーの進歩によって分析が可能になった例だ」と高木シニア・マネージャーは話す。

 IBMは歩行についても足の動かし方、上半身の姿勢、筋肉を動かすタイミング、関節への負荷、歩幅、歩行速度など様々な方面でAIを使った解析をしている。

 IBMを訪れたのは日経コンピュータ1月23日号特集「ITで創る『生涯現役社会』」の取材のためだったが、仕事であることを忘れて聞き入ってしまった。認知症が早期に発見できれば、運動や服薬などによって症状を軽くしたり進行を遅らせたりできる可能性が高まる。また介護や仕事、お金についても対策を立てやすい。私は親と離れて暮らしているが、週に1度は電話して長めに雑談しようと思った。

2065年には2.6人に1人が65歳以上

 先日42歳になった。幼い頃に想像していた42歳はもっと大人だった。20代の頃、40代の上司の背中は大きく見えた。いざ自分がその年齢になってみると、大して成長していないことに愕然とする。ただ40代になって体力が衰え、無理が利かなくなったと感じることが増えた。老いを意識するようになったのが30代との大きな差だと思う。