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 政府が掲げる「成長と分配の好循環」に向けて、国土交通省が打ち出した賃上げ企業への入札優遇策が波紋を呼んでいる。従業員の給与を大企業は3%、中小企業は1.5%引き上げると表明すれば、総合評価落札方式の入札で加点を受けられる制度だ。

国土交通省近畿地方整備局が導入する賃上げ企業への加点制度の概要。他の地方整備局も、加点数などは基本的に同じだ(資料:国土交通省近畿地方整備局)
国土交通省近畿地方整備局が導入する賃上げ企業への加点制度の概要。他の地方整備局も、加点数などは基本的に同じだ(資料:国土交通省近畿地方整備局)
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 例えば、3月決算の大手建設会社の場合、2022年度の社員1人当たりの平均給与(賞与や残業代を含む)を21年度よりも3%以上引き上げると表明すればいい。従来の加算点が40点満点ならば、そこに賃上げ加点として3点上乗せされる。最近、総合評価で点差がつきにくくなっているなか、この加点は受注の可能性を大きく左右する。

 賃上げを重視する政府の方針に異を唱えるつもりはないものの、それを総合評価の加点に盛り込む施策は、あまりに拙速と言わざるを得ない。政策実現のための都合のいいツールとして総合評価を利用することは、公共工事の品質確保を目的に導入した同方式の理念をゆがめる。