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 「トヨタグループのソフト開発を根底から変える」。トヨタ自動車シニアフェローで、TRI-AD(トヨタ・リサーチ・インスティテュート・アドバンスト・デベロップメント)CEO(最高経営責任者)のジェームス・カフナー(James Kuffner)氏は、2019年12月の会見でこう述べた(関連記事)。

 トヨタ自動車がソフトウエア開発手法の刷新に乗り出している。世界で最もコスト効率が高いとされるハードウエア生産方式「トヨタ生産方式(TPS)」を、ソフトウエアの世界でも確立することを目指す。CASE(コネクテッド、自動運転、シェアリング、電動化)を背景に、クルマにおけるソフトの重要性がかつてないほど高まっているからだ。

TRI-AD CEOのジェームス・カフナー氏
TRI-AD CEOのジェームス・カフナー氏
(撮影:日経Automotive)
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 特に力を入れるのが、ソフトウエアを効率的に作るためのツール群の開発だ。例えば、同社が開発する自動運転ソフトのうち、車に載るのは1割で、9割はツールが占めるという(関連記事)。ツールがしっかりしていれば、ソフトの開発、検証、実装といったサイクルを速く回す「アジャイル開発」が可能になる。開発プロジェクトの単位も細かく分ける。約8人の少人数のチームで2週間をめどに結果を出す「スクラム開発」を採用する。

 こうした手法は、米国シリコンバレーのIT企業をお手本にしたものだ。カフナー氏本人も米グーグル(Google)出身である。シリコンバレー流の人材育成プログラム「Dojo(道場)」を通じて、社員のマインドセットを変える取り組みも進めている。ただ、シリコンバレー流のコピーだけでは、独自性は生まれにくいだろう。TRI-ADは「クルマのプロ」としての知見を生かすことで差異化を図る考えだ。同社が開発したソフトウエア開発プラットフォーム「アリーン(Arene)」に、その一端が見える。

車載ソフトの開発プラットフォーム「アリーン」
車載ソフトの開発プラットフォーム「アリーン」
(出所:TRI-AD)
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 アリーンは、「スマートフォン向けアプリ開発環境のクルマ版」といった趣のもので、世界中の開発者を対象にさまざまなツールを提供するとともに、開発中のソフト(自動運転ソフトなど)が実際のトヨタ車両上でどのように振る舞うかをシミュレーションで検証できる。ここで検証したソフトは、ハードウエアの違いによらず「Arene OS」を搭載した車両では正しく動く仕組みだ。

「アリーンAPI」を通じてさまざまなアプリを検証できる
「アリーンAPI」を通じてさまざまなアプリを検証できる
(出所:TRI-AD)
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